『美味しんぼ』第4話「活きた魚」の感想
1988年11月7日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第4話「活きた魚」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第4話)
あらすじ
さとる「嘘じゃないもん」
山岡、栗田、谷村部長の3人は、大日エレクトロンが軽井沢の一等地に建てたゲストハウスを訪れます。
取引先や外国人の接待が目的だという建前ですが、実際には黒田社長の個人的趣味だという噂です。
- 黒田盛雄
大日エレクトロン社長。財界食通御三家の1人。
席には、接待客のほかにも会社の成績優秀者とその家族も招待されていました。
黒田社長は、大島沖で獲れたシマアジを水槽から取り出し、活造りにします。
- シマアジ
房総半島から太平洋沿岸に棲息する大型のアジ。夏の盛りを除いて1年中釣れる。旬は10月~12月。
社員(企画営業第三課の矢崎文雄)の息子さとるは「ちっとも美味しくなかった」「沼津のおばあちゃん家で食べさせてくれるから知ってる」といい、社長の反感を買います。しまいにはメイばりの「嘘じゃないもん」を繰り出します。(担当声優が坂本千夏で、『となりのトトロ』のメイ役と同じ。社長秘書の声は山寺宏一)
山岡はさとるに賛同し、翌日に食べ比べがおこなわれることになります。
山岡は活け締めしたシマアジを入手する
山岡は神奈川県三浦半島 三崎に行き、夫婦で営んでいる魚屋の「魚源」で新鮮なシマアジを入手し、そこで源さんにシマアジを活け〆にするよう依頼します。
食べ比べた結果は、山岡のシマアジのほうが美味しいという評価を得ます。
感じたこと
この活け〆は本物とは呼べない
山岡が活け締めを依頼したとき、源さんは地べたにシマアジを置いて鈎(かぎ)で締めていますが、釣りをしている私としてはかなり疑義があります。
このときに刃を入れているのは側線の下(静脈洞)と尾っぽの付け根の2箇所です。
でも、普通はまず最初に脳天締めをして、それから鰓蓋をめくって刃を入れます。そうじゃないと魚が可哀相でしょ?こういうことをすると、魚が暴れて身がうっ血しやすいです。また、鈎のような鈍い刃物で魚体を傷つけても、その周囲がうっ血しやすいので本来は推奨されません。
しかも水に浸けずにいると、血が凝固してうまく血抜きできなくなることもあるんです。
そもそも地べたに置くと暴れて身割れを起こすのでスポンジの上で締めます。っていうか道路で締めるのがそもそも問題でしょう。(まぁそこはアニメなので目を瞑るとして)
しかも神経締めをしていませんし、搬送時も氷に直付けで、熟成期間を設けていないので旨味を十分に引き出せているのか甚だ疑問です。
これらの点から、この光景はちょっと「本物」とは言えないなぁと感じました。
最近だと色んな流派があります。↓↓↓
鰯の塩焼きと血抜き
くりこはオチの部分で富井副部長が美味しいと言った鰯の塩焼きについて、「ほんと、このイワシ、活け〆なさったんですね」と言って士郎がズコーっとこけてエンディングを迎えます。
恐らく「イワシみたいな小さい魚を活け〆するわけないやろっ!」というつもりでオチにしているんでしょうけど、これも納得いきませんね。
確かに、イワシのような小型~中型の魚は1匹ずつ血抜きすることはほぼありません。小さくて身が柔くて難しいですし、しかも匹数が多くて作業が膨大過ぎて採算が取れませんからね。
なので血抜きせずにまとめて氷締めするのが一般的です。
でも氷締めだって活け締めの一種なので、くりこは何も間違ったことは言ってないはずなんです。
- 氷締め
刃物を使わず、魚体に刃を入れずに氷による冷却のみで魚を締める方法。
小さすぎて上手に刃を入れられない魚、匹数が多すぎて採算が取れないアジやイワシのような小型の魚に向いている。
市販で流通している魚は、イワシだろうがサバだろうが血抜きされていないことが多いです。ハマチサイズですらです。手間が惜しいみたいです。
でもね、イワシでもやっぱり活け〆して血抜きしたほうが確実に美味しいです。特に加熱調理する場合は血は確実に味の邪魔になりますからね。また、数日間熟成させてから旨味成分を引き出したい時にも、血抜きをしないと身が腐敗しやすくなるので、こだわっているお店はイワシみたいな小さい魚でもちゃんと活け〆と血抜きをした魚を使っています。
くりこの発言で士郎がずっこけるのはそういうことを知らないとしか思えませんでした。
津本さんという方はそういう血抜きをしています。この界隈では有名な方です。まぁこれでは筋肉レベルでは血が抜けていないという論争もあるんですが、ここでは割愛します。
で、その津本さんが「美味しんぼの原作者は勉強家だ」ということをInstagramで語っていました。美味しんぼでも47巻の200ページではタイの5日熟成について言及しているんですね。時代を越えてリスペクトし合うって面白い。
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