『美味しんぼ』第71話「不器量な魚」の感想
1990年11月27日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第71話「不器量な魚」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第84話)
あらすじ
山岡に女の影
このところ、会社に電話が掛かってきてはいそいそと出かけていた山岡。「きっと女に違いない」、と女性陣は後ろをついて歩き、森口直太郎の営む犀(さい、動物のサイ)に入りますが、電話の主は中松警部だったと判明します。
ほっとしているとくに子が来店し、金沢の前田屋に帰ってくるよう森口を説き伏せますが失敗。山岡らは帰りにくに子と遭遇し、焼肉屋 江香園で顛末を聞きます。
森口が犀を開いた顛末
大旦那は自分の娘を森口の嫁にすることを、娘の気持ちも確かめずに森口と2人で勝手に決めていました。しかし娘は森口の弟弟子の精次と結婚。大旦那と女将は娘を説得しますが、結局は断念。
自分の顔が醜いが故に破談したと思い込んだ森口は傷心のまま前田屋を飛び出して犀を開きました。
大旦那は病で右半身が不自由で、精次も交通事故で怪我を負い、平成二年度の金茶会の料理を作れるのは森口しかいないため、くに子が独断で説得に来ていました。
- 森口直太郎
犀のオーナー兼板前。元は前田屋で一番腕の立つ板前。
金沢出身で、金沢の料理を出してくれる。酒も天狗舞、菊姫を揃えている。(どちらも石川県が蔵元)- 大旦那
金沢でも由緒ある料亭 前田屋の亭主。病で倒れて右半身が不自由になった。
- くに子
ショートへアの女性。森口のことを直さんと呼ぶ。精次のこと精さんと呼ぶ。
森口に惚れている。- 精次
前田屋の大旦那の娘と結婚した、森口の弟弟子。
交通事故で腰の骨を折って3ヶ月は復帰できない。- 金茶会
金沢で一番格式の高い茶会。昔から茶道が盛んな金沢のみならず、全国から名のある茶人が集まる。料理を引き受けているのは料亭 前田屋。
ゴリのような料理人
ゴリは見てくれは不細工だが美味しい、山岡のそんな話を聞いた森口は自分とゴリを重ね合わせ、ゴリのような料理人になると決意すると、金沢に戻って金茶会の指揮を取り、精次に教え忘れていた技術を授けます。
後日、くに子は休みをもらい、森口を口説きに犀へ。
登場した料理、食材
犀のゴリ料理
昔は金沢市内を流れる男川「犀川」と女川「浅野川」でよく鮴が獲れたという。
- 鮴(ゴリ)の千歳煮
- ゴリの洗い
身の甘さと歯ごたえが絶妙。
- ゴリの骨酒
イワナの骨酒とも違い、野性味が溢れている。野趣横溢。(やしおおいつって何?)
- ゴリの白味噌仕立て
ゴリは泥臭さを抑えるために酒茹で(さかゆで)にする。灰汁を抜いて針のように細く刻んだ少しのゴボウとゴリを椀に盛り、敢えてゴリから出汁を取らない。
ゴリの野性味と白味噌の上品な味の対比と調和が美味しい。
感じたこと
今回のクリコが可愛すぎる
- 会社で噂を聞いた時の表情
- 後をつける時の様子
- 犀に着いた時の眉の垂れ下がった弱気な顔
- 電話の相手が中松警部だと分かった時の様子
- 安堵して士郎の料理を取り上げる
室生犀星
- 室生犀星
むろお さいせい
明治中期に生まれ、大正から昭和中期まで活躍した石川県金沢出身の小説家、詩人。
小景異情
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしやうらぶれて
異土の乞食かたゐとなるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
語意
原文 | 語意 |
---|---|
小景 | ちょっとした風景 |
異情 | 風変わりな心境 |
よしや | もしも、仮に |
うらぶれて | 落ちぶれて、みすぼらしくなって |
あるまじや | あるまい、ではないなぁ |
かへらばや | 帰りたいものだ |
現代語訳
故郷というのは、遠く離れて懐かしみ、悲しく歌うべきものであって、たとえ違う土地で落ちぶれたとしても、帰るべき所ではない。
遠く離れた都会で、夕暮れにふるさとを懐かしんで涙ぐむのはよくあることだが、その思いを心に抱いてまた都会に戻ろう。
やしおおいつって何?
- 野趣横溢
やしゅおういつ。
士郎がゴリの骨酒(焼いたゴリに熱燗の酒を注いだもの)を飲んだ時に言った言葉。
野性味が溢れんばかりに感じられる、という意味。士郎のセリフではやしおおいつと聞こえる。
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