大和ハウスの建築基準に関する不適合の話、第一感「レオパレスに比べたらそこまで問題無さそう」
以前に建築士資格持ちの私がレオパレスの界壁施工不備問題を見て思ったことを書きましたけど、2019年4月12日にも大和ハウスでも建築基準法不適合のの住宅が2000棟以上見つかったというニュースが出ました。
どちらも建築基準法に違反していることに変わりはありませんが、見た感じちょっと雰囲気は違いますね。
もくじ
概要
- 戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等について
大和ハウスのメーカー公式ページ。リンクはPDF形式です。
概要としては次のような不具合みたいです。(詳細はリンク先を読んで下さい。)
防火安全性が不十分な恐れ及び柱の仕様の不適合
2階廊下を支えている柱についての問題。本来なら真っ直ぐな柱と、建物の基礎から離れた基礎が必要なのに、どの施工でもL字の部材だった。且つ、防耐火処置がなかった。
L字の柱を使う施工法も存在はするっちゃするけど、それは認定仕様じゃない。ということみたいです。
独立基礎の仕様不適合
独立基礎の高さが認定仕様と違った。本来なら620 mmのところが、725 mmとか。725 mm以外にも他の寸法もあるらしいが載っていない。(例えば650~800 mmとか振れ幅が書いてない。こういう些細なところが引っかかるなぁ・・・という印象)
私見:まだどうにかなる話
「型式適合認定外=構造に問題がある」ではない
大和ハウスの場合、外部廊下を支える柱の基礎が、建物本体の布基礎のベースの上に乗っています。第一感としては、そもそも「基礎の上に他の基礎を作る」というこの工法自体が気持ち悪いのですが一応確立されてるみたいなので、構造的には問題無さそうです。(私はそういう施工を実際には見たことがないのですが。)
- 型式適合認定
簡単に言えば・・・指定された条件の建物において、指定の規格を使えば審査を簡略化できる部材や製品のこと。
例えば、「こういう建物でこの柱を使えば、構造的には確実に安全だから、審査を省略するよ」という具合。
で、重要なのは、「型式適合認定外=構造に問題がある」というワケではないことです。
例えば、「10 cm角の柱を使うなら一律安全ってことにするよ」っていう型式適合認定があったとします。で、その建物に20 cm角のめっちゃ太い柱を使ったら、認定しているものとは違うのでアウトって話になります。じゃあ建物に構造的に問題があるかっていうと、柱が太いんですから確実に安全ですよね。
公式ページの下の方にあった図面を見る限りでは、これはそういう類の話に見えます。あくまで私の主観として。一番気になるのは、角柱を使わなければならないところで丸柱とかH形鋼を使っている部分ですね。
対象になっているのは2001年1月31日から2008年9月11日までに引き渡した関東圏内の物件ですよね?
別に大和ハウスを追跡しているわけじゃないので分かりませんけど、これらの建物は2011年3月11日の東日本大震災を経験しても、倒壊したとか、何かその部分(外部廊下)だけ特段の問題や破損があったんでしょうか?あったなら問題でしょうけど、あの大地震でも何も無かったのだとしたら構造的には問題は無いと考えるのが自然でしょう。
防耐火の改修も比較的用意
防耐火については現状のままでは確実に問題はあるでしょうが、外部にむき出しなので、レオパレスみたいに小屋裏の界壁を継ぎ足すのと比べれば、入居者が出て行かなければならい必要性もそこまで感じませんし、あとから改修することは比較的容易なのではないでしょうか。
お施主さんとしては「いい加減な仕事をしおって!」と怒るかたもいるでしょうけど、メーカーとよく話し合って、納得のいく改修ができるといいですね。
やっぱり確認検査機関にも問題があるのでは?
レオパレスの時にも言いましたけど、確認検査機関がそれをチェックできていないのがそもそも問題なんじゃないかなぁと感じます。だって確認検査機関に審査を依頼するのにお施主さんは5万円も10万円も支払ってるんですよ?お施主さんの立場に立てば、その審査がザルだったらお金をドブに捨ててるようなもんじゃないですか。
確かに、確認検査機関には毎日色んな建物の申請がやってきますし、型式適合認定の条件と仕様を全て把握して照らし合わせて、問題があったら弾くというのは手間がかかると思います。
確認検査機関側からしても、「あそこの会社ならそんなめちゃくちゃなことはしてへんやろ」っていうのもあるでしょうし。
でも大和ハウスとかレオパレスって規格建物を扱う大手じゃないですか?当該建物が規格商品だったかは分かりませんが、よく利用している検査機構とは「うちはこういう仕様なんで」って、ある程度連携が取れるはずなんですよね。
だから「なんでこういうことになっちゃうのかなぁ」といつも不思議です。
で、ここから先は2019年5月31日以降の追記です。
大和ハウスがなぜこんな構造にしたのか
上でも触れましたが、最初にニュースになったのを見て、図面を確認した時に「なんでこんな気持ち悪い仕様にしたんだろう??」と思ったんですが、これは建ぺい率を有利にするための悪知恵だったようです。その詳細が2019年5月31日に以下のお知らせとして発表されていました。
- 外部調査委員会による調査の状況に関するお知らせ
2019年5月31日に発表された内容です。
建蔽率の緩和
通常、建物は敷地いっぱいに建てることはできません。商業地域で100%建てることができる特殊な例を除けば。
大抵の建ぺい率は60%です。この計算の対象は「柱で囲まれた部分」や「屋根、バルコニー、廊下、庇などで柱から1 mを超える部分」です。分かりやすくいうと、「柱を持たずに空中に飛び出した部分が1 m以下なら建蔽率には含まない」ということです。
一般的な屋根の出は大抵60 cm以下ですから、大抵は屋根の下の部分の面積は建蔽率に加算されません。
大和ハウスはこの緩和を使い、2階の廊下を支える柱を建築物の壁にピッタリくっつけるようにして設計した、ということがコトの始まりだったようです。
100歩譲って、それで形式適合認定が取れてるならいいですけど、それも取れていませんからね。あまりにお粗末だなぁという感しかありませんね。上場企業がちゃんとした手順を踏んでいないのはやっぱり問題ですよね。
もちろん、実際に構造的に問題があるかどうかはまた別の問題なので、「これで必要以上に騒いで物件の価値を無駄に毀損するのもまた違うしなぁ」とも感じます。そんなことをしたって損をするのはオーナーさんですからね。ただ企業はやっぱり何かしら制裁を受けるべきだし・・・難しい。
まぁ部外者の私としては進捗を様子見するしかありません。
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