『美味しんぼ』第116話「究極VS至高・菓子対決!!」の感想

1992年2月11日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第116話「究極VS至高・菓子対決!!」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第131話)

あらすじ

陶人設計の茶室

究極VS至高の対決、今回のテーマにお菓子を提案してきた至高側に対して、究極側は受けて立つことに。

山岡は唐山陶人から、和菓子屋・甘善堂の主人宅の茶室設計を手掛けたので見に来ないかと誘われ、対決のヒントが得られるかもしれないと考えます。

茶席には海原雄山も同席。そして世の中の人にお菓子の基本を考え直して欲しい、更に この茶室の中に、菓子に大事なものが隠されているとヒントを出す雄山。

社に戻った山岡は、仙台支局から送られた石原堂の駄菓子と、小泉局長の磨いていたパーシモンウッド製ゴルフクラブを見て、雄山のヒントに気付きます。

究極VS至高

  • 究極陣営:柿の羊羹
  • 至高陣営:干し柿

至高側が素朴な干し柿を出してきたのに対して、究極陣営は手を加えた柿の羊羹で対抗し、引き分けに持ち込みます。

登場した料理、食材

唐山陶人の設計した甘田の茶室で供されたもの等

縞柿木地の炉口(炉縁)

京都の旧家に江戸時代から仕舞ってあった古材。

堅くて実が詰んでおり、熱に強く反りが来にくい。

マスカット最中

マスカットを甘口の白ワイン「ソーテルヌ」(Sauternes, 作中ではソルテーヌと発言)に漬けたものを最中の皮の中に入れたもの

石花堂の駄菓子

先代の主人が、日本各地の駄菓子を集め、「仙台菓子」として売り出したことで有名。

石橋屋がモデルと言われている。

第12回・究極VS至高・菓子対決!!

第81話「究極VS至高~エイと鮫(後編)」以来の対決。(TVシリーズ版としては第123話「究極VS至高 対決!!スパゲッティ」以来)

究極VS至高 戦績表
対決回話数テーマ究極勝敗至高
165卵の前菜ゆで卵トリュフソース(全卵)卵の黄身の味噌漬け
166卵の前菜ゆで卵トリュフソース(黄身のみ)卵の黄身の味噌漬け
269キャベツとカブの料理フグの白子のキャベツ包みキャベツの芯トマトソースがけ
270キャベツとカブの料理カブの出汁煮カブとマッシュルームペースト
270キャベツとカブの料理カブの山ぶどうの汁漬けカブとマッシュルームペースト
377餃子水餃子蒸し餃子
377餃子黒砂糖の蒸し餃子蒸し餃子
481エイ料理エイの縁側のバターソースエイのドレッシング和え
12116お菓子柿の羊かん干し柿

後攻:究極の菓子料理

仙台の有名な駄菓子屋・石花堂の主人は云う、駄菓子の甘さの基本は干し柿である 干し柿の甘さを超えてはいけないのだと。

会津 身不知柿(みしらずがき)を、焼酎の空樽に詰めて渋み・エグ味を抜く樽柿にして、その樽柿の実を濾して寒天を加えて固めたもの。

中に入っているのは枯露柿(水分が約25%)を細かく切って蒸留酒ジンに漬けてふやけさせたもの。砂糖も、寒天で甘みが薄くなった分だけを加えて、極力甘みを抑えている。

至高の菓子は、菓子と果物の中間点とは言え加工度においては果物そのもの。一方、究極の菓子が更に手を加えた理由は、甘いものに対する人間の根本的な憧れを盛り込みたかったため。

先攻:至高の菓子料理

甘柿のなかでも最も甘い次郎柿で作った干し柿。

芳しい風味。外は表面はサラリと乾いているが中身はトロリとクリーム状。

表皮が色づき、糖度が十分に高くなり、渋みが抜けたころにもいで皮を剥き2,3日干す。水分が70%以下になる程度で干すのをやめて保存する。

静岡県森町の農家に依頼して、15年掛けて念入りに手入れした柿の木から収穫した柿を使用。

感じたこと

甘柿の方が甘いの?

干し柿を作る時にわざわざ渋柿が使われる理由は、渋柿の方が甘柿より糖度が高いからなんですが、海原雄山の用意した甘柿はそういった渋柿より更に甘いの?

一般的な柿の糖度
柿の種類糖度
生の甘柿16度
生の渋柿20度
干し柿50度

以前、住友林業のCMで長澤まさみさんが半袖姿の暑い季節に干し柿を軒先に吊るすシーンがあって「梅雨に干すな、っていうかそれ甘柿ちゃうんか」みたいに色々ツッコまれてました。梅雨から夏に干すのはカビが生えやすいのでともかくとして、海原雄山からすれば浅薄な連中は渋柿でしか甘い干し柿が作れないと思っているようだなってことなんでしょうか。

実はめっちゃ簡単に作れる樽柿

樽柿

空いた酒樽に渋柿を詰めて、樽に残った酒気で渋を抜いた柿。

柿渋の成分はポリフェノールの一種「タンニン」で、水溶性タンニン。

酒が柿に触れるとアルコールはアセトアルデヒドになり、水溶性タンニンと結合して不溶性タンニンになる。不溶性タンニンは唾液には溶けないので、渋みを感じなくなる。

こう聞くと、酒樽が無いと無理やんってなると思うんですけど、実はヘタの部分に蒸留酒を塗るだけで渋抜きができるんです。一般的には風味に影響を与えないように焼酎が使われますが40度以上あればウイスキーでもブランデーでも大丈夫。美味しんぼ風にジンを使うのも面白いかもしれません。ジンはハーブを使った蒸留酒で、果物との相性は良いと思います。

ジンについては別にまとめているので良かったら下記リンクもどうぞ。↓↓↓

厳密に言えばこれは樽に詰めておらず、柿を酒に醂すので、醂し柿(さわしがき)と呼びます。

  • 小さい皿に焼酎を深さ1 cmほど入れる
  • ヘタ側を下向けにして柿を焼酎に浸し、すぐ取り出す
  • ビニール袋に入れる
  • 袋をダンボール等に入れて冷暗所で5日から10日寝かせる

干し柿にするより圧倒的に楽で、しかも真夏でも簡単に作れる、干し柿の味が苦手って人には一石三鳥なのでは。

ちなみに、保管場所として冷所という人もいれば暖かい場所という人もいますが、個人的には冷所で長時間のほうが良い。恐らく暖かい場所の方が早く渋みが抜けるのだと思いますが、やはり極端に暖かい場所は実によくないと思うので常温以下が無難です。

至高側の勝ちなのでは?

雄山から世の中の人にお菓子の基本を考え直して欲しいって言われてましたけど、それはあくまでも雄山のコンセプトであって、別に士郎もそれに従う必要はないはずで、雄山の尺度の中に収まろうとしてる時点で究極側の負けなのでは?と思ってしまいました。