映画『カクテル』(1988年)を観た感想

トム・クルーズアメリカの映画『カクテル』(1988年)を観ました。若かりしトム・クルーズで目の保養をしたかったので・・・。

概要

概要
タイトル原題初公開日ジャンル時間rating制作費売上監督
カクテルCocktail1988年7月29日ロマンティック ・コメディ・ドラマ映画103分アメリカG2000万ドル1億7150万ドルロジャー・ドナルドソン

本作は評論家から否定的な評価を受け、さらにゴールデンラズベリー賞最低作品賞を受賞したものの、制作費2000万ドルに対して1億7150万ドルもの興行収入を得た。

あらすじ

兵役を終えた野心家の主人公ブライアン・ブラナガン(トム・クルーズ)は、ニューヨークの金融業界で就職活動をしながらカクテル・バーのオーナー、ダグラス・コグランの下で働く。

ダグからバーのイロハを教わりバーテンダーとして上達するブライアンはダグと名コンビとして一躍スターになり、やがて「Cocktails & Dreams(カクテルと夢)」という自分たちの店を持つことを夢見て、ダグもそれに応える。

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ブライアンはバー「CELL BLOCK(監獄、刑務所の独房棟)」で金持ちの写真家コーラルと知り合い恋仲になるも、ダグと賭けをしてコーラルを寝取られ、おまけに「秘事をバラした」とコーラルからも振られ、喧嘩別れをしてブライアンはバーを飛び出す。

ジャマイカに渡りバーテンダーとして資金稼ぎをしていたブライアンは、急性アルコール中毒で倒れたバカンス中の女子学生の救助をきっかけに、彼女の友人ジョーダン・ムーニーと恋に落ちる。ちょうどその頃、金持ちの令嬢ケリーと結婚して逆玉の輿を果たしたダグが再び現れて成功を見せびらかす。

ダグはコーラルの時と同じように、ブライアンがボニーを落とせるか賭けようとそそのかし、ブライアンはボニーを口説き落とすが、その現場を目撃したジョーダンは翌日帰国してしまう。ブライアンはジョーダンに未練はあるものの成り行きでボニーに付くことにしたが、対等の立場に立たせてくれないボニーに苛立ちを覚え、帰国後に破局する。

ジョーダンの働くレストラン「Jerry’s(ジェリーの店)」で料理を頭から掛けられながらも退勤を待ったブライアンはジョーダンから妊娠を告げられる。伯父/叔父に相談したすえに彼女を追いかけるも、ジョーダンはパークアベニューにある両親の超高級アパートに引っ越しており、アパートを尋ねるも父親からは小切手であしらわれる。

新しく開いた店のダグを尋ねると、ダグはブライアンをヨットに連れ出し、50年以上熟成したルイ13世で乾杯し、コモディティ投資(商品先物取引)に失敗した経緯を打ち明ける。酩酊したダグを置いてケリーと2人きりになるブライアンは思いとどめてヨットに戻るも、ダグはピストルで自ら命を絶っていた。

プライドが邪魔をして悩みを押し殺していたダグの後悔と結末を見たブライアンは再びジョーダンを迎えに行き、彼女も家を出ることを決意する。

ブライアンは昔ダグと語っていた「Cocktails & Dreams」というバーをオープンさせ、ジョーダンは子供が双子であることを明かし、大喜びしたブライアンは「店のおごり」にする。

映画に登場したルイ13世はこちら。↓↓↓

感想

美男美女が次々現れては甘いシーンが登場して、そういうのをボンヤリ眺めて目の保養をする。今のところそれ以上の感想が見当たらないというのが正直なところです。

ブライアンとジョーダンがジャマイカで毎日楽しく過ごす一連のシーンは特に「映画のよう」で、映像を単純に「美しい」と思えるし、コーラル役の若い頃のジーナ・ガーションが美しい。

ただ、私はお酒が好きですし、カクテルについても少しばかり興味があるクチ(特にドライマティーニを自宅で作って飲むのが大好き)なのですが、この映画では昔ながらの渋いバー(オーセンティックバー)は「しみったれた店」として描かれ、ブライアンの働くバーは「一発逆転を狙うフレアバーテンダーと馬鹿騒ぎする店」として描かれ、バーやカクテルに対する敬意が無いというか、それにまつわるウィットに富んだ描写があるわけでもなく、「ただフレアバーテンディングをするトム・クルーズを撮りたかっただけなのかな。百歩譲って、アンチテーゼとして描きたかったのだとしても無理があるのでは」と感じざるを得ませんでした。

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作中では、純愛・堅く結ばれた友情、野心などが描かれていますが、どれをとっても中途半端で、映画の主張を掴めずにいます。

まず純愛

最後は純愛で終わる割には、ボニーやコーラルに関する賭けのみならず、ついついケリーにも手を出しそうになります。本当に理性的ならケリーを遮ってダグについての話し合いは出来るはず。

ジョーダンの父親とのやりとりもそう。「金じゃない!愛なんだ!」という話の割には、その小切手が1万ドル(約100万円)という少額。この描写は映画としてあまりにチープすぎやしませんか??1984年の1万ドルは2022年の価値だと2.90万ドル~3.5万ドルくらい(450万円前後)に相当するんですが、それでも安すぎる。出ていったとはいえジョーダンは金持ちの娘に変わりはなく、結婚することで相続や資金援助など1万ドル以上の恩恵が得られる可能性はまだ少なからず残っているわけで、小切手を破っただけで純愛を謳うブライアンには不信感しかない。

これが1000ドル(10億円)だったら大人しく引き下がっていたかも、これまでのブライアンのおこないはそう思わせます。

もっというと、下手をしたらボニーの待遇次第ではずっとボニーと一緒だったかも、そう思わせるブライアンにはやっぱり不信感しかない。

そして友情

結局は二人で店を持つという夢を叶えることができなかったものの、ブライアンはダグの意志を引き継いで「Cocktails & Dreams(カクテルと夢)」という店を開き、ピンクのネオンや看板のデザインも彼の要望通りに叶えています。

ところが、その彼とは普段からdisり合っています。「仲が良すぎてそんなこともお構いなしの関係」だというならそれまでなんですが、2人でベロベロによって夢を語り合ったことがあったにしても、そういった仲良くなるまでの描写があまりに少なく、ラストでブライアンが涙を流しながら遺書を読むシーンでの感情と、それ以前の描写とのギャップに「ポカーン」としてしまいました。

後半でブライアンを自分の新規店のバーテンダーとして招き入れなかったのは、もう破産するからだという観点からは理解できますが、ダグは逆玉の輿から転落するまでの間にブライアンに何か援助や協力を仰いだわけでもなく、ほぼ「最期の別れ」として現れているように私には映ります。ジョーダンの妊娠期間から考えると、ちょうど含み損が膨らんでいる最中に現れているみたい。

また、ダグの死後はきっとケリーも大変だろうに、ケリーはわざわざブライアンに遺書を回してくれています。ブライアンは彼女にふりかかる災厄をダグから聞いて知っているにもかかわらず、彼女に対して何かしてやるシーンは一切ありません。亡き親友の愛した妻ケリーはほぼモブ扱いです。

それって本当に「強い絆で結ばれた友情」なんでしょうか。「ジャマイカにいる時点で、プライドが高かったダグでさえブライアンに悩みを打ち明けて、ブライアンがそれに応えて何か新しいことが起こる」という展開の方がまだ2人の絆や友情を描けたと思うのですが、実際にはダグが死ぬ頃にケリーとブライアンはちょっとチョメチョメしようとしてるし、なんかいろいろと虚無感しかありません。

ブライアンが読んでいた本

ブライアンが読み、ダグが「読んでおけばよかった」と言っていたのは『Think Smart Move Fast』 (Charles H. Ford, 1984/10/1)という本です。

ダグの遺書

My dearest Brian,

A guy like me looks in the mirror, he either grins, or he starts to fade away. And I haven’t seen anything to grin about in a long time. This may not be the most graceful exit, but I know when the bottle’s empty. The only thing I’m really going to miss is the conversations we had. At least I get the last word, even if I had to mail it in. Coughlin’s Law: Bury the dead. They stink up the joint. As for the rest of Coughlin’s Laws, ignore them. The guy was always full of shit.

Doug: But I guess you knew that already.

親愛なるブライアン

鏡に映るおれはニヤリと笑うか 影が薄いか・・・今はニヤリと笑うこともない
優雅な退場ではないが酒瓶は空になった
ただひとつ懐かしいのは君と交わした軽口だ
最後の一言はおれに言わせてくれ
コグランの法則:”死人は におう前に埋めろ”
あとの法則は無視してくれ おれはつまらん男だ
君には分かっているはずだ