『美味しんぼ』第7話「炭火の魔力」の感想
1988年11月28日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第7話「炭火の魔力」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第7話)
あらすじ
筏屋の金三
夜の街で暴れる男を中松警部が取り押さえたところ、男(金三)はうなぎ裂きを持っていました。
その場にも居合わせていた山岡と栗田は銀座中央警察で経緯を聞きます。
炭火からガス火へ
「裂き3年、串5年、焼き8年」と言われる鰻の世界で、金三は25歳で先代からお店の取り仕切りを任されるほどに成長しました。
しかし先代が亡くなり、アメリカ帰りの若旦那が合理化重視に企業方針を転換し、炭火を廃止してガス火に切り替えたことで金三は憤りを覚えて店を辞めます。
一方、若旦那が率いる筏屋は、合理化を重視した店舗を(第3話で登場した)ニュー銀座デパートのグルメストリートに出店します。
事情を知った山岡・栗田・中松警部の3人はニュー銀座デパートの板山社長に話を通し、デパートのグルメストリートに隣接して催される大江戸物産展で金三の店を出し、筏屋と張り合おうと提案します。
うなぎの旬と土用の丑の日の由来
鰻は万葉集にも読まれるほど古くから親しまれてきました。
うなぎの旬
本来、鰻の旬は夏ではなく晩秋から冬(10月~12月)です。
平賀源内説
由来は諸説ありますが、1つは平賀源内説。うなぎ屋が、夏の土用の丑の日の頃になると売上が落ちることを平賀源内に相談したところ、源内が「本日丑の日」と書いた紙を店先に貼らせたところ繁盛したのが土用の丑の日に鰻を食べるようになった始まりだと言われています。
土用の丑は年に6回もある
土用の丑の日と言えば、誰もが7月の中旬から下旬のことを想像しますが、実際には1年を通して定期的に訪れ、年平均で6回ほどあります。
でも、「土用の丑の日=うなぎを食べる夏の日」というイメージが定着してします。
金三と筏屋の対決
金三の店は換気扇を止めて、客に炭火焼きの匂いを嗅がせて集客します。そして客に好きな鰻を選ばせてそれを調理しました。
結果、金三の店は日ごとに大繁盛し、若旦那は自分の過ちを素直に認めて金三を再び迎え入れます。そして板山社長は自分のグルメストリートに名店を手に入れたと大笑いします。
感じたこと
捌きの描写が秀逸
背開きにする瞬間にうなぎがきゅるっと丸まろうとするところとか、開いたあとに背骨を取り除く瞬間の描写がとてもよくできているなぁと感心しました。
青うなぎ
作中では青うなぎが登場します。
- 青うなぎ(青丹、水色)
背中は鮮やかな青色や深い緑色で、腹は白色。
養殖か天然に関わらず、泥が臭くなく、綺麗な場所に住むと青うなぎとして成長するとされている。黒いうなぎよりも上質とされる。
でも天然うなぎは背中が茶色くて、お腹は金色を帯びています。天然こそ至高とは言いませんが、日焼けしたような金色のうなぎは健康的で美味しそうに見えるんですよね。私にとっては。
マジマジと両者を食べ比べたことがありませんから実際のところは分かりませんけど、どうなんでしょうか?うなぎ屋さんのサイトの紹介でも、ちょっと見た目が違うんですよね。
例えば、小田原の友栄の説明は本当に青いうなぎで、お腹も真っ白です。でも岡山のうなぎ水産の説明では背中が深緑でお腹は少し金色を帯びています。私はうなぎ水産の説明のほうが自然だと感じます。
ニホンウナギの絶滅危惧種の指定と漁獲高の激減
今となってはニホンウナギの数はかなり減少しているようです。2014年6月にはIUCN(国際自然保護連合)レッドリストに絶滅危惧種として選定されました。
2018年1月には漁獲高が2017年比で1%(1/100)というニュースもありました。
- ウナギは食べていいのか 水産庁と日本自然保護協会に聞いてみた|ねとらぼ
この記事では、うなぎの保護について水産庁と日本自然保護協会の意見は割れています。
水産庁:
原因が特定できていない状態で消費者が購入を控える必要はない
日本自然保護協会:
予防原則にたって、ウナギの保全を最優先で考える必要があります。
水産庁の言い分「理由が分からないからとりあえず獲ってもいい」っていうのはかなり傲慢に感じます。そもそも、原因を特定して漁獲高を確保するのがあなたたち水産庁の仕事でしょう、と。
うなぎ屋業界も商売上、退けないのも分かりますけど、もっと保全に努めないとどっちみちウナギがとれなくなって潰れると思うんですけどね・・・。
- 図表集|福岡教育大学
福岡教育大学の福原達人さんのサイト。ウナギだけではなく、色んな魚やクジラの漁獲高の推移をグラフで見ることができます。
- ウナギの漁獲高
下の画像は同サイトに掲載されている1950年から2011年までの61年間のウナギの漁獲高です。
- シラスウナギの採捕量と平均価格
ウナギは完全養殖が確立されていないため、幼魚(シラスウナギ)を捕獲して、それを養殖する必要があります。しかしシラスウナギの量も年々減少してきて、現在では価格も高騰しています。価格高騰は密漁の増加にも繋がり、消費者の負担にもなり、良いことは1つもありません。
『美味しんぼ』が描かれた頃でも既に漁獲高は減少しているはずなのですが、これらについて一切触れていないのはちょっとどうかなーとも感じました。
鰻の血抜きと神経締め
アニメだと鰻は血抜きもせずに背開きにして蒲焼にしています。でも、加熱調理をする場合、血は確実に魚味の風味悪くします。
下の動画では津本さんが鰻の血抜きをおこなっています。
こうやってしっかり血抜きをして、更に数日熟成させてから焼けば、もっと美味しくなるのではないかと思うのですが、どうでしょう?白焼きなら大きく味に差が出るかもしれませんが、長年使われてきた秘伝のタレをつける蒲焼きだと、そこまで差が出ないのでしょうか。
ちなみに鰻の血には毒があるので、加熱して毒成分を破壊して食べるのが一般的で、刺し身では食べられません。
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