『美味しんぼ』第14話「横綱の好物」の感想

2019年5月9日

1989年1月30日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第14話「横綱の好物」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第14話)

あらすじ

高山部屋のちゃんこ鍋

山岡、栗田、大原社主の3人は高山部屋の朝稽古を見学しに行くと、大相撲の横綱 若吉葉(わかよしば)の後援会に所属している海原雄山が現れます。
栗田「あっ、海原雄山・・・」(呼び捨て)

親方によると、高山部屋のちゃんこ鍋が美味しいのは、後援会にいる海原雄山のおかげだといいます。

アラの鍋

2日後には、大原社主が幹事を務める後援会主催の激励会が開かれます。

大原社主が要望を伺うと、横綱は「アラの鍋が食べたい」と言い、山岡たちは鰤のアラ(臓物や中落ちなど、身を取り外した残りの部分)を使った鍋を考えます。

しかし実際には、ハタ科のアラという名前の魚のことであって、アラ(残りの部分)ではなかったのです。アラ違いです。(アラ~)

海原雄山の助言

当日、大宝堂で開かれていた中国陶器展に山岡と栗田が訪れると、海原雄山もそこにいました。

雄山は「大原社主は頓珍漢だな、福岡に行ったことがないのか」「大恥をかかせてやる」などと士郎に話しかけ、山岡はこれを聞いて「アラ違い」だったことに気付かされます。

福岡でアラを入手

山岡と栗田は福岡に向かい、山岡の知人 安部さんが今朝アラを売ってしまった「相撲茶屋 大塚」で買い戻しを直談判します。

山岡の熱意に加えて若吉葉が食べることを知ると大将はアラを譲り渡すことを快諾します。そして若吉葉のファンでもある大将は、自分も東京へいき、若吉葉の前で解体ショーをすることを譲渡の条件とします。

料亭 楽天

激励会の会場は「料亭 楽天」。

30分遅れで到着した山岡たちは2 m近くはあろう巨大なアラをみんなに披露し、「相撲茶屋 大塚」の大将は小出刃1本で解体ショーを始めます。

感じたこと

ホウレンソウがずさん過ぎない?

毎回思うんですけど、山岡は電話一本入れたりその場で一言説明すれば済むような話を、翌日にワケのわからない遠方地まで足を運ばせたり、連絡しなかたり・・・・面倒くさすぎる。

アラは2種類いる

アラと呼ばれる魚は2種類いて、どちらもスズキ目ハタ科の海水魚です。

アラ

スズキ目ハタ科アラ属の海水魚。別名はイカケ(山陰、広島、長崎)、オキスズキ(高知)、ホタ(関西)。他にも、神奈川ではキツネと呼ばれ、九州ではタラと呼ばれている。
体長は1 mに達する。

クエ

スズキ目ハタ科マハタ属の海水魚。九州ではアラと呼ばれている。ほかには、西日本ではモロコで、クエと呼ばれるのが最も一般的。高級魚として有名。
体長は1.3 mに達することもある。

しかし、アニメに登場するアラの魚体は判りにくい描画で、どちらのアラかはちょっと同定しにくい。

美味しんぼに登場したのはクエとアラ、どっち?

とは言っても、アニメに登場したのはアラではなくクエのほうではないでしょうか?
理由は次の通り。

見た目

アニメでの全景の見た目はクエではなくアラに近い。特に顔の尖り具合はアラに似ている。でも捌いているときの描画は完全にクエに見える。

体長・体重

アニメでは2 m近くの巨大な魚体が登場しますが、アラではそこまで大きくならない。クエも普通はないけど、可能性としてはなくはない。また、クエなら50 kgを超えることもあるので、3人掛かりで持ち上げている絵面を合致します。
下の動画はクエ系の一種でタマカイという魚です。

捌き方

「相撲茶屋 大塚」の大将は小出刃1本で解体しています。最初に魚体の表面を薄く削り取っていますが、これは「鱗のすき引き」と呼ばれる技です。皮のごく表面だけを削ってウロコごと取り除く技で、高等技術とされています。私も自分で釣ったハマチとかブリとかをすき引きで捌いています。でも実際やってみると、大きい魚ほどそれほど難しくはないと感じます。

下の動画は私がよく見ているNara hirokazuさんの動画。

アニメでもそうですけど、スズキのウロコのすき引きとは違ってクエはすき引きにすると真っ白な皮下が見えます。しかもアラ、スズキ、アジのようなタイプの魚は顔の皮まではスキ引くことは困難です。アニメでは顔の皮まですき引きにしています。

九州での呼び名

若吉葉の出身は福岡。

クエはちゃんこ鍋の定番食材

クエは相撲界ではちゃんこ鍋の定番の具材。

これらのことを総合すると、アラではなくクエだと捉えるのが自然ではないでしょうか??

またその一方、第36話「香港味勝負 後編」でも「アラ」についての話が出てきますが、こちらはクエではなくアラ(九州のタラ)だと思います。

詳細は第36話の感想を参照ください。

寝かしたほうが絶対美味しい

下の動画はネムリ鉤(先端が内側に曲がった釣り針のこと)で1本釣りしたクエの処理動画です。血を徹底的に抜いたクエは鍋に入れたときに出汁が濁らないんです。長期熟成はもちろんですが、鍋に使うなら徹底的な血抜きは必須です。

アニメに登場した魚はかなり立派でしたね。大将に売ったのは今朝だったけど、それまで倉庫で熟成させてたのかな?そう願いたいですね。