『美味しんぼ』第10話「料理のルール」の感想

2019年8月17日食べ物・飲み物, アニメ

アニメ版の『美味しんぼ』第10話「料理のルール」をアマゾンプライムビデオで見ました。

あらすじ

ル・キャナルで鴨料理

フランス料理店としてパリでも有名なLe Canard(ル・キャナル)が銀座にオープンすることになり、究極のメニュー作りをしていることを意識しているためか、東西新聞社にも4人分の開店披露の招待状が届きます。

店に着いて料理を待っていると、そこへ海原雄山がやってきます。

みんなが白ワインを飲みながらオードブルのヒラメを食べていると、海原雄山は「何にでもバターと生クリームを使ったソースを掛けなきゃ気が済まんのだからな」と言い出します。

さらに「血と骨髄を使ったソースの鴨料理」がサーブされますが、雄山はわさび醤油で食べ比べをおこない、「計算され尽くした日本の会席料理こそ完成度が高い、至高(大意)」だと言い、レストランオーナーのローラン氏(Monsieur Laurent, ムッシュ・ローラン)は怒り震えます。(Monsieur: 氏)

山岡は「会席料理でも、料理人が指定した食べ方以外でそれを上回る食べ方や手を加える余地はある」と反論し、2人は対決することになります。

料亭「静木亭」で供された会席料理

付き出し

キスの梅肉焼き、笹鰈の煮焼き、カラスミの三種の盛り合わせ。

煮焼き

食材を一度煮てから焼く調理方法。

替わり肴

エビの黄身寿司(酢で締めた新鮮なエビで玉子の黄身を包んだもの)

吸い物

潰しエビの吸い物(叩いて潰したエビに葛の粉をまぶして茹で上げたものを入れた吸い物)

お造り

カツオのお造り(鰹の刺身)
冬の旬の、脂の良くのったカツオ。

懐石料理と会席料理の違い

会席料理

酒を呑むことを主眼にしたコース料理。最後にご飯や味噌汁が供される。

懐石

茶会で茶を飲む前に摂る軽い食事。最初にご飯や味噌汁が供される。酒を飲むこともあるが、あくまでその後に茶を飲むことに主眼を置いている。
懐石という言葉自体に料理という意味があるため、懐石料理という言葉は意味が重複している。

千利休の時代の茶会記では、「会席」という言葉遣いも見られ、本来、会席料理と懐石は同じ起源を持つ。

カツオの刺し身に醤油マヨネーズ

山岡はカツオの刺し身を生姜醤油で食べるところを「醤油マヨネーズ」を付ける美味しい食べ方を提示して勝負に勝ちます。

醤油マヨネーズの発祥は、カツオを食べ飽きていたカツオ漁の漁師が誤ってサラダのマヨネーズの中に刺し身を落としてしまったことがはじまりだとしています。

そして次のように「料理を食べるにはルールがある」と諭します。

フランスの偉大な文化であるフランス料理を尊重するが故に、俺は鴨をわさび醤油で食べるようなマネはしたくない。

他者の文化を理解しようともせず、嘲笑したり破壊しようとする人間は野蛮で下劣だ。

海原雄山がル・キャナルを激賞

雄山は醤油皿を投げてお膳をひっくり返して、逃げるように立ち去ります。
しかし後日、雑誌食世界(月刊誌)には雄山がル・キャナルを激賞したことが紹介されます。

感じたこと

トミー、失礼過ぎるやろ

冒頭、ル・キャナルを訪れて海原雄山に遭遇した瞬間、「海原雄山!」と指を差しているんですけど、失礼すぎません?(笑)

海原雄山のレイシストぶりにイラッ

冒頭で海原雄山はフランス料理について「何にでもバターを使う」と揶揄していますが、この批判の仕方をみて、最初こう思ったんです。
「国籍とか人種とか持ち出してナチュラルにヘイトスピーチする感じ、トミーより不愉快やなぁ。これはアニメ内でどうこうという問題では済まされないのでは?」と。

でも話の続きでは、士郎がこう正しています。

しかも会席料理のほうが鴨料理より上だ等と言って喜ぶに至っては、料理愛国主義の哀れな発露とも言うべきで、滑稽でみっともないだけだ。

更に後編では士郎は会席料理でカツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べることを提案し、雄山に対してこう名言を残しています。

他者の文化を理解しようともせず、嘲笑したり破壊しようとする人間は野蛮で下劣だ。

ほんまそれ。

寿司ポリスと同じ

で、なぜ私がこういう話で異様なまでにイラっとするかというと、こういう下衆なことが現実世界でも平然とおこなわれているからです。

「ニセ寿司」は存在しない – 世界のコメ料理

ぶっこみジャパニーズ10というゴールデン番組についてのツイートをまとめたTogetterの記事。

アフリカの寿司屋に日本の寿司職人が素人を装って潜入し、最後は「俺が本当の寿司を教えてやる」といって成敗もとい嘲笑う下劣な番組構成を多くの人が批判している。

「アフリカの寿司」はもうそれは「日本の寿司」ではなく、「アフリカの寿司」として独自性を確立しているでしょう。
日本の中華料理を見た中国人が「それは本物じゃない」とか、ぶよぶよのナポリタンを見てイタリア人が「まじかよ日本人・・・」とか言ってる番組作られたらイヤでしょう?
海原雄山がフレンチの店でわさび醤油を使うというのは周囲の人に対する配慮がなく、根源的にはこれと同じなんですよ。

「鰹=血のニオイが強い」は誤り

作中で、くりこは「鰹という魚は血のニオイが強くて生姜とかを薬味に使うんだけど」って言っていますけど、ちょっと奇妙に感じます。

確かに鰹は血が多くて腐敗しやすくて、血のニオイも強い魚です。でもなぜそうやって食べざるを得ないかと言うと、釣った直後にちゃんと血抜き処理をしていないからです。

マグロに比べると鰹は小さく、釣ったあとに1匹1匹血抜きをしている暇もありませんし、数も多いのでそもそも物理的に難しいので、市販の鰹は血生臭くなりやすいし薬味を使います。

でもこの鰹の刺し身は海原雄山が用意させた料理でしょ?もしそういう事情を知っていれば、そんな鰹を使わないはずです。

下の動画は鰹ではなく鰆(サワラ)ですが、参考にどうぞ。津本さんによる「究極の血抜き」という手法です。
サワラも血が多くて身がブヨブヨというかモチモチしていて、釣った時に鉄っぽいニオイがする魚です。

口取り、口替わり、替わり肴

静木亭でエビの黄身寿司(酢で締めた新鮮なエビで玉子の黄身を包んだもの)を出すとき、雄山は「かわりざかな(替わり肴?)」と言っています。

会席料理には「口替わり」というのもありますけど、それのことでしょうか?でも様式からすると、それとはちょっと違うみたいなんですよね。「口替わり」は数種類の料理の盛り合わせなのに対して、アニメに登場した料理は一品でしたから。

口替わり(口代わり)

酒の肴になる数種類の料理を、少量ずつ一皿の盛り合わせたもの。「口取り肴の替わり」という意味。

エビの昆布締め

酢で締めたエビの黄身寿司を見て思い出したのが、エビの昆布締めです。

クマエビの昆布締めの料理動画を最近見ましてね。美味しんぼを見ていてこれを思い出しました。エビは芯までは火を通さずに、外側だけ絶妙に加熱されていて、しかも昆布の旨味を吸っていて、めちゃくちゃ美味しそうで、「この料理と似た雰囲気を持っているなぁ」と感じました。

料理のルール=他者に対する尊敬

エピソードタイトルは「料理のルール」です。料理のルールとは、他者や他文化に対する尊敬だと思うんですよね。
上で紹介した寿司ポリスもそうですし、もっと身近な話だと「自分好みに塩とか醤油とか料理にかけまくる人」。そういう行為が、作ってくれた人をどんな気持ちにしているか考えたことがありますか?と。作った人が「好きなように味付け変えてもいいよ」という人なら話は別ですが、そうじゃないと時はやっぱり気遣うべきだと思うんです。料理に限らず、やっぱり何事も思いやりですよ。

くりこがまた惚れそう

これを横で見ていたくりこは、目をキラキラさせています。また士郎のことが好きになっちゃったなー!

醤油+マヨネーズ=スルメのイメージ

  • 干物スルメ(干しイカ)
  • 焼きイカ

こういうのを食べるとき、「マヨネーズ+七味とうがらし」の人もいるかもしれませんが、我が家では「醤油マヨネーズ+七味とうがらし」です。いかにも酒の肴って感じで、美味しいんですよね。

醤油マヨネーズって普段はこういう料理にしか使ったことなかったんですけど、カツオの刺し身にも合うんですね。本当かな?今度試してみようかな。