『美味しんぼ』第20話「板前の条件」の感想

2019年12月4日

1989年3月27日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第20話「板前の条件」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第22話)

あらすじ

京極万太郎と会食

京都の億万長者、京極万太郎が東京へ来ることになり、山岡と栗田は岡星で会食をします。京極は岡星での味噌汁やご飯の味が忘れられずにいました。(第2話参照)

板場には、大将の岡星精一の他にも岡星良三が立っていました。(初登場)

元は、競争率50倍もある海原雄山の美食倶楽部に入れてもらったものの、追い出されていました。

岡星良三

兄は割烹岡星の大将、岡星精一。

海原雄山の夕食を担当

ある日、良三は中川の命令を受けて海原雄山の夕食を任されます。良三の料理は上出来らしく、先輩達から「俺なんか吸い物6度も作らされた」、「お小言が出ないなんて凄い」と囃し立てられますが、これを聞いた良三はプレッシャーとストレスのあまりに板場を飛び出しますが、しばらくすると帰ってきてカレイを薄造りにします。

海原雄山「この刺し身を造ったのは誰だ!」

この刺し身を食べた海原雄山は板場にやってくるなり「腕の良し悪し以前の問題だ、こやつには料理をする資格がない!」と言って良三をクビにします。

良三のタバコ

海原雄山の真意を追求するため、京極は良三に同じ薄造りを造らせます。しかし山岡士郎が海原雄山の息子だと聞いた良三は再びプレッシャーからタバコを吸ってしまいます。山岡も雄山同様、良三が吸ったタバコのヤニの匂いに気づきます。

海外でも香水の調合師、ウイスキーのブレンダー、ワインのソムリエらがタバコを吸ったら職を失うのと同じように、料理人もタバコを吸ってはいけないと京極は諭します。

良三を復職させる試み

良三を復職させるには、「良三が手放すには勿体ない料理人」だと海原雄山に思わせる必要があります。

京極らは板場の主任である中川得夫に根回しした上で美食倶楽部を訪ねて雄山と会食し、極めて繊細に味付けをした料理を雄山に食べさせます。

味覚と嗅覚を試されたと悟った雄山は板場に行き「これを作ったのは誰だ!」と良三に詰め寄ります。入っている材料を言い当てて満足げな雄山は「タバコを喫むやつにこんな料理が出来るわけ無いだろ、早く次の料理を作れ」と言って良三の復職を認めます。(そして中川の寿命は縮んだ)

雄山の高笑い

岡星を覗きにきた雄山は、良三が山岡たちと話しているのを見て事情を察します。店に入らず車に戻ると、勇山は車内でこれまた満足げに高笑いするのでした。

登場した料理、食材

鯛の白子のいとこ漬け

冒頭、岡星で京極らに供された。本来はスルメと数の子を味噌、みりん、醤油などで調味した料理。

サヨリの梅肉和え

冒頭、岡星で京極らに供された料理。

オコゼの湯引き

冒頭、岡星で京極らに供された料理。肝酢につけて食す。

すっぽんの内蔵を生姜醤油で炊いたん

美食倶楽部で海原雄山が京極万太郎に食べさせた。従来なら後で出す料理だが、最初に持ってくることで京極を驚かせた。

良三の料理

春雨と同じ豆(緑豆、えんどう豆等)を使って膜状に薄く作った具は無味無臭で、舌触りと歯ごたえだけを与えている。

つゆの出汁の取り方は調味料の配分は完璧。酢を使ってあるがキツイ香りを抑えてあり、全体としても味付けが薄めに造られている。

そして、その中に微かに桑の実を漬けて色と香りを出した酒をつゆに混ぜてある。(雄山はその候補として、木苺、スグリ、さくらんぼ、コケモモを挙げている)

感じたこと

岡星精一「桜鯛といきたいところですが」←え??

冒頭。岡星精一は京極万太郎に「桜鯛といきたいところですが」と言いながら「鯛の白子のいとこ漬け」を供していますが、ちょっと異議あり。

多くの人は桜鯛(4月~5月に獲れる産卵期を迎えた鯛)を有難がりますが、産卵期を迎えて婚姻色の出た魚は身のクオリティーが落ちています。(劇中で白子や卵巣を食べている点については正解と言えますが)

精一の度量に惚れる

もし良三が美食倶楽部への復職に失敗したら、「田舎へ帰るか?」と覚悟を聞いたあとに「ふふ、心配すんな。ダメだったら兄ちゃんがずーっと使ってやるよ」と言って良三を慰める精一がカッコ良すぎる。こうやって、近くにいる人間を包摂できる人って最近減ったんじゃないかなーと感じているだけに、彼の言動はしびれますね。

雄山の高笑いにワシ大満足

ラストのシーンで雄山が高笑いをしたのは、士郎の実力を垣間見たからですよね。父として子の立派さを知ったときの喜びがあの笑いに込められているかと思うと思わずニンマリしちゃいますね。