映画『しあわせの絵の具 / 愛を描く人 モード・ルイス』を観た感想

モード・ルイスというカナダの女性画家の半生を描いた実話映画『しあわせの絵の具 / 愛を描く人 モード・ルイス』(原題: Maudie)を観ました。彼女はカナダで国民的に愛されている最も有名な画家の1人です。

概要

概要
タイトル原題初公開日ジャンル時間rating制作費売上監督
しあわせの絵の具 / 愛を描く人 モード・ルイスMaudie2016年9月2日ノンフィクション映画116分アイルランド
カナダ
G, PG-13560万ドル11,850,575ドルエイスリング・ウォルシュ

モード・ルイス(旧姓: モード・ダウリー)はカナダの東端にあるノバスコシア州マーシャルタウンの出身で、後にアイダおばさんとディグビーに引っ越しますが、映画の撮影場所はそこから更に車で1600 km以上も東にあるニューファンドランド・ラブラドール州 セント・ジョンズ周辺だそう。(直線距離にしても1000kmくらいありそうでスケール感覚狂う)

あらすじ

モード・ルイスは幼少の頃にこどものリウマチ「若年性特発性関節炎」にかかり、手足が上手に動かせなくなる。いい大人になっても親族からお荷物扱いされた彼女は家政婦の求人に応募して住み込みで働くことを決意する。

独学で絵を描くことが好きだった彼女は、その家で家具や壁にまで絵を描き始める。雇い主で漁師のエヴェレットは粗暴で無口だったが、彼女のそれを止めはしなかった。そしてある日、ニューヨークから来たサンドラという女性がモードの絵に一目惚れする。

作中の曲も良い

エンドロールで流れるリサ・ハニガン(Lisa Hannigan)の曲『Little Bird』をBGMにどうぞ。映画を観た後だと、この曲を聞くだけで泣けることに気づきました。やばい。歌詞もすごく良いんです。映画のエンドロールには歌詞の和訳も付いているので見てみてください

水中で歌うMVも良い。

「この曲は泣ける」とか言う人がいても、私は「音楽聞いただけでそんなことあるかいっ(笑)」とか内心で思っちゃうタイプなんですけど、映画を観た後でここまで情報が乗ってると普通に泣いちゃいました。

この曲も作中で使われています。↓

感想

久々に泣いちゃった

伝記ものなのでスペクタクル映画のような派手さはないんですけど、グッと心に響く映画でした。映画を観て泣きそうになったことはあっても泣いたことはほとんど無かったし、ましてや咽び泣くことは『ニュー・シネマ・パラダイス』くらいでしかなかったんですけど・・・本当に稀有な映画です。

ファーストインパクトとしては★9でした。めちゃくちゃ良かった。『ニュー・シネマ・パラダイス』のようにまた後年に観たくなるか、何度観ても泣けるか、そこらへんでまた評価を変えようと思います。でもとりあえず★9としたい。

エンドロールも観て欲しい

映画の締めくくりでは、エヴェレットと喧嘩した後のサンドラとの「窓が好き」だという会話が蘇ります。そしてエンドール。

(The whole of life,) The whole of life already framed right there. Maud Lewis

(命があふれてる) 命の輝きが ひとつのフレームに そこにあるの モード・ルイス

欠点という欠点が見当たらない

作品全体の雰囲気や流れ、人物の心境変化がとても自然なので引き込まれる。

「ここぞという見応えのあるシーン」は無いので質素な映画には感じるんですけど、観終えた後にどのシーンに適当に飛んで戻ってみても「「良いシーン」が描かれているんです。無駄がなく、とても洗練されていることに気付かされました。

メモ

この繊細さと対極的な映画で、泣ける良い作品なのにシーンごとの流れが激しすぎると感じたのが2009年のボリウッド映画 きっと、うまくいく(原題: 3 Idiots)。

幸せの定義

この映画でモードが教えてくれたこと。

  • 人を愛するということ
  • 人を赦すということ
  • 幸せになるということ
  • 強く生きるということ

作中では、ほぼ常に彼女の目線で物事が描写されています。(もちろん物理的な意味ではない)
彼女の作品が国外でも人気になり、自分の活躍が新聞に載ったりテレビ局が押しかけてくるようになっても、描写は全て彼らや家が中心です。

普通の映画だったら、こういう場面は凄く客観的に描くと思うんです。例えば、彼女の絵を買ったアメリカのリチャード・ニクソン副大統領を登場させたり、都会の皆が話題にしているシーンを入れたり、あるいはオークション価格が釣り上がるシーンを入れたり。

でもそれは彼女が標榜している「幸せ」ではない。皆が考えている「幸せ」と彼女の「幸せ」は根本的に違う。だからこそ、エイスリング・ウォルシュ監督なりの「モードにとっての幸せ」を表現するために、モードや家を中心にした描写になったと思うんです。

エヴェレットの最期

作中には描かれていませんが、モードを亡くして以降エヴェレットはこの家に住み続けましたが、1979年に強盗に押し入られてもみ合った末に殺されています。
家はしばらく放置され、損傷や劣化が激しくなりました。

モード・ルイスの家

その後、モードの家は移築・保全されています。

モードの絵は下のGoogle画像検索で見ることができます。(画像検索結果)↓