映画『シンドラーのリスト』を観た感想(全員観よう)

2020年11月17日

ウクライナ系のユダヤ系アメリカ人 スティーブン・スピルバーグ監督による1993年のノンフィクション映画『シンドラーのリスト』をアマゾンプライムで観ました。何年も前から誰に聞いても勧められるので早く観なくちゃ!と思いながらも、戦争映画だとかホロコーストが舞台だとか一切知らないまま「とにかくエグい」という事だけ知ったまま観れずにいた映画。近代でモノクロというのもまた珍しい。
前半はネタバレ無しでいきます。


良かったらこれを再生して読み進めてください。

概要

概要
タイトル原題初公開日ジャンル時間rating制作費売上監督
シンドラーのリストSchindler’s List1993年12月15日戦争映画、歴史映画195分アメリカ18歳以上対象2200万ドル約3億2130万6305ドルスティーヴン・スピルバーグ

オーストラリアの小説家トマス・キニーリーによる原題はSchindler’s Arkシンドラーの箱船)ですが、映画化する際に英語でもArkからListに改題されています。

あらすじ

舞台は第二次世界大戦でナチスドイツが占領下においたポーランドの都市クラクフ。ユダヤの人々はクラクフ・ゲットー(ゲットー:ユダヤ人を収容する狭くて劣悪な居住区)に押し込められて生活することになります。

ナチ党員の実業家オスカー・シンドラーは実務は苦手でしたが、得意だった社交でSS将校に取り入ります。そして経理が得意なユダヤ人シュターンを筆頭に、ポーランド人よりも賃金の安いユダヤ人を雇い入れて軍事用の琺瑯鍋生産の事業を興します。戦争が長引けば長引くほど儲かる商売の始まりです。
工場名はD.E.F.(Deutsche EmailwarenFabrik、ドイツほうろう容器工場)。

メモ

ポーランドはナチスドイツの支配下にあったものの、ポーランドもまた国家としてユダヤ人を迫害をしていて、それが迫害に拍車を掛けた。詳細は水晶の夜を参照。

歴代映画TOP10に入る名作中の名作

さすが、多くの人が名作として名前を挙げるだけの作品です。個人的にもそう感じる作品でした。これを観たあとに他の映画を観ると、どうしても比較して辛口評価になってしまう、それくらい素晴らしい。

ただその理由が、実話を元にしているにも関わらずストーリー性がフィクション映画を超えているという点が私の中で評価をより高めているのか、あるいはそう感じさせたり説得力を持たせるのは、この映画がノンフィクション映画だからなのか、どっちなのか私にも正直分かりません。でもこれまでになく胸を打たれる映画であったこともまた事実です。

3時間15分もありながらその長さを感じさせないし、時間が無駄だとも思わせない。

これを見ることが現代人の務めとさえ思える

そんな風にいうと押し付けがましいかもしれません。でも観終わってからは自分の中の何かが壊れてしまったかのような感覚があって、数日間は何も手につかないほどでした。それを取り払いたくて色んな映画で気分転換をしようと試みたほどです。それくらい影響力が大きい。「戦争映画はハッピーになれないから見たくない、自分には関係のないことだ」という考えは、当時の人々がユダヤ人の迫害を見て見ぬフリをしたことと同じなのではないかと思うんです。

白黒で良かった

たぶん白黒のほうが制作する上でカラーコレクションやカラーグレーディング等の編集作業の手間は減っているはず(サボり魔の発想)。でも恩恵はそれだけじゃないと思います。

質感がはっきりする

  • シンドラーが身にまとっていた革のコートのシボ加工の質感
  • 毛皮のフサフサ感
  • 賄賂に使ったダイヤのきらめき
  • 紫煙のシルエット
  • シンドラー夫人のエナメルバッグのツヤ
  • 夏場の涼し気な淡いリネン(麻)のスーツに、濃く見えるパンチボウル (Punchbowl)
  • 列車の屋根の隙間から落ちてくる水

こういったモノの質感が際立って見えてとても良い。

一部で使われるカラーの被写体が映える

作中にはカラーの被写体が存在しますが、全編が白黒だからこそこれらが映える。

  • 少女の赤いコート(彼女の詳細については後述)
  • 安息日(サバス)のろうそくの火

冒頭を除けば作中でのカラーは赤いコートの少女だけだと思っている人が多いようですが、それは間違い。終盤でろうそくに灯す前のマッチの火は白黒ですが、灯ったあとの灯だけがカラーです。
これらは生命を象徴しているようです。

グロさが緩和される

単純に血の色を見なくて済むというのも大きい。白黒だからこそ被写体の質感に集中できるし、ミクロ的なグロさではなくマクロ的なグロさに集中できるのだと思います。いやまぁ、どの描写をとっても十分グロいんですけども。。。

今までに観た他のホロコースト映画と比較して

ネタバレにならない程度に紹介しながら比較してみます。結論を先にいうと、1つ(帰ってきたヒトラー)を除いて全て見る価値がある映画です。
これは長いので別ページに移してまとめ直すかもしれません。

戦場のピアニスト(2002年、Amazon Prime)

これも実話。シンドラーのリストと同様に、名作として挙げる人も多いですね。
西暦2000年に死没した実在のポーランド系ユダヤ人 ウワディスワフ・シュピルマンを主人公とした映画。カラーのせいか、シンドラーのリストよりも描写は残酷で凄惨に見えます。でも観終えた後に残る衝撃はシンドラーのリストのほうが圧倒的に強い。戦場のピアニストの終わり方のほうが清々しいし、構図や音楽が美しすぎるからなのかもしれません。

作品内容が素晴らしいのは勿論ですが、構図やカメラワークについてはシンドラーのリストに比べてはるかに美しい。これだけでもロマン・ポランスキー監督すごい!と思いました。しかもポランスキー監督は実際 幼少期にクラクフ・ゲットーに押し込められ、母をアウシュビッツで亡くしています。正に生き証人で、シンドラーのリストの監督候補にも上がっていました。これだけでももう見るしかないでしょ。

また、全編にわたって聞けるどの曲もいい演奏。調べてみると、ピアノもやっぱり良いものを使っているようです。選曲が良くても残念な演奏が使われてしまう映画はたくさんあるのでこの点は特に良かったと思います。音楽がテーマの1つなのにダメな演奏では目も当てられないので。

また、登場するクラシック音楽はただのBGMではなくストーリーや心情を表しているので、曲や作曲者を知っているクラシック好きの人ならより一層楽しめると思います。(例えばドロタが後半で弾いてる曲とかね)

感想はこちらでまとめています。

ワルキューレ(2008年、Amazon Prime)

ヒトラー暗殺計画を図り、現在のドイツでは英雄視されている将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を描いた実話。

トム・クルーズが主演というだけでもこれまた見応えがあります。シンドラーのリストとはまた別の緊張感がハンパじゃない。ヒトラーの独裁体制の裏でこうやって抗った人たちに光が当たることの意味合いはシンドラー同様とても大きい。

イングロリアス・バスターズ(2009年、Amazon Prime)

タイトルを和訳すると「栄光なき野郎ども」といったところでしょうか。
クエンティン・タランティーノのフィクション作品。ブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、メラニー・ロランの名演が観られる、これだけでもう観る価値があります。笑えるシーンもあって良い。ただしラストの締め方は一気にチープに感じました。長くなってでも、もっと良い締め方が出来なかったのかと残念に思う。それでも良い映画と評価できるだけの内容。

ちなみになぜこれを見ようと思ったかというと、『オーケストラ!』(原題: Le Concert)というチャイコン(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲)を題材にした(奇しくもイングロリアス・バスターズと同じ2009年の)フランス映画でメラニー・ロランの美貌を知ったという不純な動機です。ハイフェッツやパールマン(後述)のチャイコンを知ってから作中の演奏を聞き直すとなかなかの酷さを感じてしまいますが、 私はこの映画でチャイコンを知ったし、曲も好きになったので個人的にはとても思い入れがあり、きっかけを与えてくれたことにすごく感謝しています。

ヒトラー 最期の12日間(2004年、Amazon Prime)

これも実話。
ヒトラーの個人秘書官だったトラウドゥル・ユンゲという実在の女性の視点で、最期の地下生活まで描いた作品。主演のアレクサンドラ・マリア・ララがこれまた美しい。年老いたトラウドゥル・ユンゲ本人(2002年に死去)も映画の最後に登場します。ヒムラー、ヒトラー、カイテル元帥など主要な人物の人相の再現度が最も高いと感じる作品です。結構違うなと思う人物もいますが、実物よりやばそうなゲッベルスもこれはこれでアリかなと。

ヒトラーが実際どのような人物でどのような最期を遂げたのか、最も間近で見た人の回想が元になっているので再現度はきっと高いのでしょう。その意味で貴重な映画です。シンドラーのリストにはヒトラーなどのナチス幹部が一切出てこないのでこっちはこっちで見応えがあります。

ちなみにヒトラーが地下室で「ちくしょーめー」と激昂する巷で有名なMADの素材元でもあります。

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015年、Amazon Prime)

1人で全てをやってのけたゲオルク・エルザーを主人公とした映画。周囲が段々とナチズムに狂っていくなかで自分が正しいと思うことを貫いた実話で、彼の生き様や個性の凄さに見入ってしまいました。シーンごとのカラーグレーディングに対して細やかに気を遣っている感じがとても良い。

辛いシーンを思わず飛ばしてしまうことが多々あったけど、観るべき映画の1つとして評価できる作品でした。シンドラーのリストが白黒なのはやっぱり見やすい。

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦(2017年、Amazon Prime)

ラインハルト・ハイドリヒ暗殺を目的とする「エンスラポイド作戦」に関する実話映画。
主にヨゼフ・ガプチークとヤン・クビシュの2人の軍人を描いていて、作戦自体は中盤で終わります。恐らく、史実を伝う上で銃撃戦の描写が必要ということでどうしても後半を長くせざるを得ないのかもしれませんが、視聴者としては辛いし退屈。支援者の人物像については同じテーマの映画『ナチス第三の男』(2019年)とちょっと違う部分が多い。ハイドリヒの顔はかなり似てます。

ナチス第三の男(2019年、Amazon Prime)

上の作品と同じく「エンスラポイド作戦」がテーマ。上の作品では2人の軍人を多く描いていてハイドリヒが出るのは一瞬。

一方こちらはハイドリヒをナチ入党前からかなり主体的に描いているのが大きく違う点です。ところが、役者の顔つきがかなり違う上に、ラインハルト作戦、長いナイフの夜、水晶の夜、グライヴィッツ事件などの悪行の数々がほぼ語られないというのは如何なものか。そういう点についてはアーモン・ゲートの悪行をしっかりと描いたシンドラーのリストは「正しい構成」と言えます。

偽りの忠誠 ナチスが愛した女(2016年、Amazon Prime)

オランダに亡命した元ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の動向を監視するために派遣されたドイツ将校と、その屋敷で働くユダヤ人メイドの女スパイとの恋物語。
珍しく、ドイツ最後の皇帝ヴィルヘルム2世が登場する映画。美しいヒロインを見てハッしました。ダウントン・アビーのレディー・ローズ・マクレア役(ちょいちょいダウントンに遊びにくるお嬢様)を演じていたリリー・ジェームズじゃありませんか!しかもあのレディ・ローズがあんなことやこんなことを・・・あわわわわ・・・もうこれだけで楽しい。

小説を元にしたフィクションですが、時代背景と恋愛をうまくまとめ上げていて、とても評価できる作品です。ただし、イギリス映画のためか、チャーチルやヴィルヘルム2世が極端に贔屓目に描かれている点は如何かと。時代背景だけを利用するならまだしも、実在の人物の描写にやや無頓着な感じがした点についてはマイナスとしておきます。

帰ってきたヒトラー(2015年、Amazon Prime)

評価する/しない以前のゴミ作品で作品と呼ぶにも値しない。

「これはこれで啓発になっているし、これを許せるドイツはまだ健全」等と評する人もいますが、それは間違いです。誰かを啓発するという名目で誰かが傷付いたり犠牲になったりしてはならんのです。特に、ヒトラーがメルケル首相を皮肉った後に今のドイツの現状を憂慮している場面は反吐すら出ますね。このヒトラーは現代でもコメディアンとしてうまく立ち回る姿を見せていて、「犠牲者の立場から見て許せる作品か」と問うてみた時、とても許せるとは思えませんでした。

なぜ私がここまで毛嫌いするかというと、このような茶化した描写では作品を見る人によって捉え方が正反対に変わってしまう恐れがあるからです。いわば犬笛。ある人には「ヒトラーはやっぱりけしからん」と映ったとしても、ネオナチのような民族主義者には「ヒトラーやっぱりすげぇ」と映ってしまうかもしれないし、はたまたナイーブな人(世間知らずな人)にとっては「ヒトラーって実は良い面もあったのでは」ととっつきやすい存在にさせてしまう危うさがある時点でダメなんです。
また、この作品では「不寛容な主張に寛容であれ」とする部分が見受けられますが、カール・ポパーのいう寛容のパラドックス(不寛容なものには不寛容であるべき)にも当てはまり、ナチスも寛容の隙間をついてあそこまで大きくなってしまったのです。なので口汚くなってでも「これはゴミ」と否定せねばならんと私は考えているのです。

シンドラーのリストは1回見るだけでも覚悟と体力が必要ですが、こんなゴミを1時間も見るくらいならシンドラーのリストを3回見たほうがまだよっぽどマシです。

シャッター・アイランド(2010年、Amazon Prime)

直接ホロコーストを描いた作品ではありませんが、ダッハウ強制収容所で起きたダッハウの虐殺が関連した作品としてここに挙げさせてください。
マーティン・スコセッシ監督にレオナルド・ディカプリオ主演の映画。シンドラーのリストでシュターン役として出ていたベン・キングズレーもジョン・コーリー医師として出ています。

時間を忘れさせて観客を引き込むチカラや、レオナルド・ディカプリオの演技は素晴らしいものがありますが、考察した中で気づいた矛盾点や不満点がちょっと多い。エンターテインメントとしては評価できますが芸術評価としてはそこまで高くはありません。

感想や考察の詳細は別ページでまとめています。

印象的なシーンや言葉

ではここからネタバレ有りで。

平然と行われる略奪と迫害

(0時間18分頃)

ユダヤ人の一家が立派な家から追い出された直後、それを尻目にシンドラーがやってきて「いい所だ」と言ってベッドに寝転び、一方追い出された一家は押し込められたゲットーで「ひどい所!」と怒ります。

秘書選び

(0時間30分頃)

これは作中でクスっと笑える本当に数少ないシーンです。最初のうちに一息入れたほうがいいと監督は考えたのかもしれません。

仕事の出来ない美人はガン見するけど、仕事の出来る年増のタバコを咥えた女性は無視。タイプライター速度の緩急が絶妙です。
また、これとは別シーンですがミス・エルザ・クラウスが両親を雇ってもらうようにと会社を訪れる際にもシンドラーは階段の上から彼女を品定めをしています。これらのシーンにはルッキズムが含まれているのでけしからんとも言えますが、シンドラーは実際に好色漢だったので、これは仕方のないことなのかなと。

タウバーとクンダー

(0時間45分頃)

名前を控えて「ロシア戦線送りだ」と脅された途端、2人は必死になります。最初私は、シンドラーのリストとはこのメモ帳に挙げられた名前のことかと思いました。シンドラーから「私が5分遅れていたら工場はどうなっていたんだ?」と言われて「所詮私は道具なのか」とシュターンの足取りが重くなるのがとても印象的です。ただし史実ではこれはシュターンではなくシンドラーの会社の事務主任、アブラハム・バンキール。

シンドラーの中では、「列車で送られていく人々とシュターン」の間には「自分にとって役立つモノとそうでないモノ」という区別があります。使えない従業員だったらここまでしなかったのでしょう。なんせシュターンには自分の会社の命運が掛かっているのですから。

そして、その後に描かれる荷物の仕分けを見て更に陰鬱な気分になります。その仕分けをさせられているのもまたユダヤ人で、金の入れ歯さえも仕分け対象です。
映画『紅の豚』ではポルコ・ロッソが尻の毛まで抜かれて鼻血もでねぇと言っていますが可愛いもんで、彼にはまだ命がちゃんとあるんですよね。

アダムとダンカ

(1時間07分頃)

アダム・レヴィは友人であるジャネックの妹ダンカとその母ドレスナー夫人を守って安全な列へとエスコートします。「あなたは子供だけどもう子供じゃないわ」と。幼い子どもが子供ではいられない世界。

以前、となりのトトロの考察として面白い記事を見かけました。その中で、サツキが子供でいられる権利について触れていましたが、その世界とは正反対です。とてもおもしろかったのでオススメのnoteです。

戦争とは

(1時間35分頃)

(And, he’s got the war,) Which brings out the worst in people. Never the good, always the bad. Always the bad. Oskar Schindler

戦争は常に人間の最悪の部分を引き出す

オスカー・シンドラー

パワーとは

パワーと正義は別物だとシンドラーは言っています。

Power is when we have evryjustfication to kill, and we don’t. Oskar Schindler

パワーとは、人を殺す正当な理由がある時に殺さない事だ

オスカー・シンドラー

英語だとゲートはI pardon you.と言っています。PardonはForgive(許す)のフォーマルな言い方。

タルムード(ユダヤの聖書)の言葉

Wer einen Menschen rettet, rettet die Ganze Welt.(1つの生命を救う者が世界を救える)

タルムード(ユダヤの聖書)の言葉

これはシンドラーの妻であるエミリエ夫人の墓にも、また2008年4月10日、オスカー・シンドラー生誕100年を記念してドイツで発行された145セントの特別記念切手にもこの言葉が書かれているそう。

赤いコートの少女

シンドラーが最初に彼女を見たのは乗馬をしている最中に見たゲットー解体(57分~1時間08分頃)。そして次に見たのは、1944年4月フヨヴァ・グルカの丘で掘り起こされて燃やされようとしている亡骸。プワシュフ収容所とゲットーの1万人余の犠牲者に焼却命令が出ます。(2時間14分頃)
シンドラーはここでリストの作成を決意することになります。

当時のユダヤ人は着る物や色すら制限される身で、赤いコートは珍しかったことからこの少女の目撃者が実際に存在します。

演じた女性の現在

Oliwia Dabrowska(オリヴィア・ダブロウスカ)

1989年5月28日生まれ。赤いコートの少女(Girl In The Red Coat)を演じたクラクフ出身の女性。

彼女が撮影に臨んだのは3歳の時。
当然記憶は残っておらず、物心がついて両親から自分の出た映画と配役を聞かされて彼女は怒りました。出演したことを親が家庭内で話題に上げることに苛立ちを覚え、出演したことすら後悔したそうです。また、彼女はスピルバーグ監督と「18歳になるまで観ないこと(そもそもレーティングが18歳以上の作品)」と約束したにも関わらず、11歳でこの映画を観てしまいます。周囲の心無い人からからかわれたり、注目されたことからもトラウマになりました。
でも18歳になって監督との約束を果たすためにもう一度観た彼女は、「監督が言った通り、18歳まで待つべきだった」と考えを改めたといいます。

ちなみに、最初にベッドの下に隠れるシーンではお菓子で彼女を釣ろうとしたものの、ベッドの下にクモがいるかもと恐れて拒否されたそう。

シュターンとの乾杯

  • 名医
  • 慈悲ある神父
  • 賢い計理士

(0時間33分頃、2時間17分頃)

「人生 3人が必要だ」と言ってシュターンに礼を言った時、シュターンは乾杯に応じないので「真似事くらいしろよ」とシンドラーに怒られるくらいノリが悪い。というか金儲けに必死なシンドラーを軽蔑して冷めた目で見ていたためかもしれませんね。
でも強制収容所が閉鎖される時は涙を流しながら自ら乾杯をシンドラーに促します。

マルセル・ゴールドバーグの買収

(0時間21分頃)
ポルデック(レオポルド)とミラから「帽子が道化師みたい」とバカにされていたユダヤ人地区自治警察官ゴールドバーグはシュターン経由でシンドラーからライター、時計、タバコ入れなどを賄賂として受け取ることでD.E.F.への引き渡しに動いていた人物です。

1939年時点ではナチスのことを「噂ほどひどい連中じゃない」と言っていますが、彼もまた最後はアウシュビッツ送りになるところをシンドラーのリストによって救われた1人です。(2時間27分頃)

ユダヤ人地区自治警察官(ユダヤ人ゲットー警察)

ゲットーの治安を管理するために警察として配置されたユダヤ人。そのため、コートにはユダヤ人を示す六芒星(ダビデの星)のマークが付いています。ちなみに一般市民は腕に腕章を付けることが義務付けられていました。『戦場のピアニスト』ではこの一連の話が詳しく描かれているのでわかりやすいのですが、前提知識がない人にとってはゴールドバーグの立場がちょっと分かりにくいかもしれません。

彼もまたユダヤ人であったにも関わらず賄賂でしか動かなかったことを思うと、シンドラーのいう「戦争は常に人間の最悪の部分を引き出す」という言葉を思い知らされます。

シンドラーの心の変遷

  • り オフィスまでお礼を言いに来た年寄りの身障者を煙たがる(0時間40分頃)

  • タウバーとクンダーのくだりではシンドラーはシュターンを道具扱い(0時間45分頃)

  • 乗馬中に丘の上から赤いコートの少女を見つける(1時間8分頃)

  • ゲートに軟禁されたシュターンに食べ物の差し入れを渡す(1時間25分頃)

  • アダム・レヴィからしつこいお礼をされても煙たがらない(1時間31分頃)

  • エルザ・クラウスから依頼されてパールマン夫妻を救い出す(1時間35分頃)

  • ヘレン・ヒルシュを勇気づける(1時間42分頃)

  • 赤いコートの少女を再び見る(2時間16分頃)

  • 「君らの安息日だろ?」とラビをオフィスに招く(2時間48分頃)

ラビ(司祭)のヤコブ・レヴァルトフの頬がきゅっと持ち上がるのが印象的です。

アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100

  • オスカー・シンドラー
  • アーモン・ゲート

映画でこの2人は対極のように描かれていて、アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100には2人ともランクインしています。それによると、シンドラーはヒーローとして13位にランクインしていて、これは十戒のモーセ(43位)、スーパーマン(26位)、シュターン役のベン・キングズレーが演じたマハトマ・ガンディー(21位)より上です。すごい。

一方アーモン・ゲートは悪役の15位にランクインしていて、シャイニングの狂人ジャック・トランス(25位)、ターミネーター(22位)、宇宙戦争の火星人(27位)よりも上で、エイリアン(14位)の次のランクです。これはこれで凄すぎませんか。

考察

考察にあたって参考とした歴史に関する資料はWikipedia頼みなので確度には多少問題があろうかと思いますが、Wikipedia上での各ページ同士での矛盾点には映画のシーンとすり合わせた上で信用度合いについてはある程度考慮しています。

史実でのゲート

アーモン・ゲートもまた実在の人物。Wikipediaには悪行の数々がずらりと並んでいて、どこをかいつまんで読んでも胸くそが悪い。映画ではシンドラーから「皇帝の赦し」で一時的に諭されていますが、実際はもっと酷かったようです。

  • 1933年に反ナチ的なオーストリア政府公務員に暗殺テロをおこなう

  • オーストリアで逮捕されるも脱走する

  • クラクフに来る以前にも各地のゲットー解体で虐殺を繰り返していた

  • プワシュフ収容所長就任時には収容者に向けて「俺はお前たちの神だ。ルブリンで俺は6万人のユダヤ人を片づけた。次はお前たちの番だ」と演説

  • 所長就任後、ナチスの国庫に収められるはずだったユダヤ人から没収した財産を横領し、それで豪勢に暮らす

  • 邸宅のベランダから収容者をライフルで狙撃する(しかも親類の私怨を駆逐する目的で犠牲者の名前を控えていた、ゲート1人だけで述べ500人以上を手に掛ける)

  • 執務中に突然窓を開けて外に乱射し、外で悲鳴が聞こえるも何事もなかったかのように席に戻る

  • 邸宅から司令室までの坂を下りて行く途中で理由もなく一人、二人を撃つことが何度もあった(これは映画でもヘレンが言ってる)

  • 戦後、ダッハウ強制収容所跡地で捕虜としてアメリカ軍に収容されるも、国防軍の服に着替えて復員兵だと嘘の申告をしてバレる

  • 裁判でも「上官の命令に従っただけ」と言い逃れをする

  • 減刑目当てで自分がいかに社会に役立つかを力説し出す

  • 笑い上戸だが笑いのセンスがなかった

最期のシーンではやたらもたついているように見えますがこれも史実で、ゲートは身長193cm、体重120kgの巨漢だったために実際かなり手こずっています。(刑までの間に痩せているので120kg無かったとは思いますが)

気になる相違点や疑問点

ゲートの逮捕

調べた限り、ゲートは3回拘束されています。

  • 1934年7月にナチ党員によるオーストリア首相エンゲルベルト・ドルフースの暗殺事件に関連して逮捕された6000人のナチ党員の1人に含まれる

  • 1944年9月13日ウィーン帰郷中にSSの内偵調査により横領と囚人虐待容疑により現地で逮捕される

  • 敗戦後にアメリカ軍捕虜となる

映画でシンドラーがゲートに金を渡す時は1944年の秋頃のように見えますが、実際に一行がチェコに渡るのはツララができるほど寒くなった1944年の冬に見えます。
つまり丁度その最中にシンドラー達がブリュンリッツに向かったことになるのですが、紛らわしくなるからかそういった話は全て省略されています。また、ブリュンリッツ労働収容所への移送開始は、1944年10月15日ですが、ツララができるのも違和感があります。

邸宅バルコニーからの狙撃は本当に可能だったのか

これは可能だったし実際にあったんじゃないかと。というのも、各Wikipediaの話を列挙するとこうです。

  • 邸宅が収容所より低い位置にあり、バルコニーからの狙撃は不可能(ソースの明示無し、シンドラーのリスト|Wikipedia)

  • ヘレンの証言によれば、邸宅から司令室までの坂を降りるまでに発砲していた(ソースの明示有り、アーモン・ゲート|Wikipedia)

  • 実際の邸宅の写真は映画のデザインとかなり近い(実際の写真有り、アーモン・ゲート|Wikipedia)

また、ゲートがバルコニーでライフルを抱えながらタバコを吸っている写真も実在すれば、実際に行ったことがある人のブログの画像を見てみると「邸宅が収容所より低い位置にある」という話もかなりいかがわしい書き方だと感じます。

映画には無い描写

シンドラーの秘書との結婚

シンドラーが仕向けた秘書ルート・イレーネ・カルダーは色目を使ってゲートに取り入ったものの、最終的にはゲートと恋仲になって子供をもうけます。(Wikipediaを読む限り、彼女の主張もまた胸くそ)

炭鉱夫の保護

1945年1月にアウシュビッツから120名の炭鉱夫を助けていますが、その話や列車内で凍死者が出た話は一切登場しません。

ゲートのブリュンリッツ訪問

史実では1945年1月にゲートは(恐らくSSを除隊した後)にシンドラー達の引越し先であるブリュンリッツの工場を訪問していますが、その描写もありません。シンドラーはこのとき怯えたユダヤ人達をなだめたそう。

ただ、炭鉱夫の保護の話も同じタイミングなので、どちらか一方だけ、あるいは両方描くことは構成の上で都合が悪そうだということは私にも理解は出来ます。

音楽

テーマ曲

音楽を担当したのはJohn Williams。スターウォーズ、インディージョーンズなどのテーマ曲とか作曲しているあの有名な。

で、奇遇なことに私は十代の頃からクラシックギター奏者のJohn Williamsの演奏を聞いていて、彼がこの曲をカバーしていたので、この映画を観るずっと昔からこの曲を知っていたんです。
つまり、ジョン・タウナー・ウィリアムズが作曲した曲をジョン・クリストファー・ウィリアムスがクラシックギターでカバーしたのを知らないうちに毎日聴いていたんです。ややこしい。

しかもこの曲のヴァイオリンバージョンを弾いているのはユダヤ人ヴァイオリニストのイツァーク・パールマン。ハイフェッツほどではないですがパールマンの演奏を聞くこともあるので、より思い入れが深くなりました。

ゲットー解体時のピアノ曲

バッハのイギリス組曲(BWV 807)。
聞けばバッハと分かる曲調で、曲自体は私も持っているのですが、普段グレン・グールドのフランス組曲(BWV 812)以降しか聴かないのでピンと来ませんでした。何度も聴いても、どうも好きになれない。

ちなみにバッハ、ベートーヴェンといえばグールドの演奏が好き。ショパンと言えばホロヴィッツ。ヴァイオリンと言えばハイフェッツ。(ホロヴィッツもハイフェッツもユダヤ人)

ゲットー解体時の声歌

『Oyfn Pripetshik』
この曲は中央および東ヨーロッパにおいてラビが若い生徒たちにヘブライ語のアルファベットを教える時によく使われた歌で、今でもユダヤ人の幼稚園で歌われているそう。

カバンに金を詰める時に流れているジャズ曲

ビリー・ホリデイの『God Bless The Child』
シュターンと乾杯をする次のシーンです。

God Bless The Child – by Billie Holiday

この曲も十代からたまに聴いていて、知ってる曲が沢山出てきて思い入れが深くなりますね。いつも聴いているのはカーメン・マクレエのですが。