『美味しんぼ』第35話「香港味勝負 前編」の感想

2021年4月5日

1989年10月24日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第35話「香港味勝負 前編」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第45話)

あらすじ

主な登場人物

冬本精一

ライバル紙である帝都新聞の社会部長。

袁小牧(えん しょうぼく、袁社長)

主催するダイアモンド映画社の社長。

揚建明

袁小牧も所属するヨットクラブの会員で、袁社長と次期会長を争う香港でも5本の指に入る富豪。ワインレッド色のサングラスを着用している。

香港のボートピープル

ドラゴン・リー主演『功夫大作戦』(クンフー大作戦)のプレミアショーのため、山岡、栗田、富井の3人は香港へ向かいます。SERATONホテルに入ると、ロビーで帝都新聞の冬本社会部長に遭遇し、究極のメニュー作りを冷やかされます。
近くを散策すると、インドシナ半島からボートピープルの難民が水上生活を営んでいました。

袁社長主催の晩餐

晩餐会には様々な美食が並びます。冬本はどの料理も大したことがないと貶しますが、山岡は冬本を打ち負かします。

山岡の手腕を見出した袁社長は、ヨットクラブの次期会長争いをしているライバル揚建明との「味勝負」に勝つために手を貸して欲しいと持ちかけます。
クラブ職員を減らすという緊縮派の揚建明と思想も違う袁社長は、「自分が会長に就けばボートピープルを雇用で100人以上が助かる」と言い、昼間にボートピープルを見ていた山岡はそれを聞いて手を貸すことにします。
一方、揚建明には古くから付き合いのある冬本が付いていました。

登場した料理、食材

散策で見かけた食材

中国風の腸詰め

茹でて5 mm程度の輪切りにし、長ネギの薄切りを添えて食べると美味しい。

咸魚・鹹魚(ハムユイ、シエンユイ)

「ヒラ」や「イシモチ」や「コノシロ」といった白身魚の塩漬けを半発酵させてから天日干しで乾燥させたもの。
薄切りにして、油を引いた中華鍋でこんがりと焼く。5mmの薄切りでご飯一杯は食べれる辛さだという。釣り人は、船に山盛りの塩を積み、釣った魚の口に塩を詰め、更に魚を塩の山に埋める。

袁社長の晩餐会で供された料理

小豚の丸焼き(烤小猪)

北京ダック(北京烤鸭)と同様、皮だけを食べる。

冬本が以前に本場の広州酒家で食べたものはもっとパリパリしていたと言うが、これは炙り方が粗雑で、余分な油が残っているため。(酒家=レストラン、飲食店)

錦鶏の唐揚げ(金鸡、金雞、红腹锦鸡)

「中国でも1番美味しい」とされる鶏。
中国南部から南東部にかけて生息、分布する。1
主に観賞用として取り扱われているが、一部特権階級の高級食材の一面もある。錦鶏や黄金錦鶏の雄鶏の羽は色鮮やかで美しく、フライフィッシングの毛鉤の素材としても使われる。
現在では絶滅危惧種のレッドリストに乗っている。2

冬本が以前に食べたものはもっと脂が乗っていたというが、脂の乗りすぎた金鶏は肉本来の味が分かりにくい。
現代でも庶民には馴染みがなく、日本での「ヤマドリを獲って食べる」という感覚に近いのかも。(ヤマドリって名前を聞いてもどんな鳥か想像のつく人は少ないでしょ?)

ファッチューチョン(佛跳墙、フーティアオチアン)

修行僧も垣根を超えて食べに来るというほどの味。様々な漢方薬も入っている。福建省福州市の名物料理。
冬本が以前に食べたものにはオオサンショウウオ、山のスッポンが入っていたが、日本から来た山岡らの胃腸や体調回復を考えれば、オオサンショウウオ、山のスッポンを入れれば良いというものではない。

ツバメの巣や雪蛤を使った糖水(トンスイ、タンシュイ)

太くて立派な極上のイワツバメの巣にココナツミルクを和えて甘くしたデザート。
材料によっては氷砂糖を使う場合もあるが、一般的なタピオカ入りココナッツミルクのタピオカとココナッツと無糖練乳から作るので、この回で登場するものも同様と思われる。

冬本は、フランス料理のような絢爛豪華さや会席料理の和菓子ような上品さも無いというが、洋食のデザートは胸焼けしやすく、和菓子は脂肪分は少ないが薬にはならない。

「会席料理と懐石料理の違い」についてはこちらを参照。

スーコウ(雪蛤膏、シュエハーガオ)

カジカガエルの脇腹にある脂肪分を干して調理時に戻したもので、強壮効果があるとされる。
他の呼び方として、ハスマ(Hasma)、Harsmar, hashima, toad oilなどがある。

感じたこと

トミーの下品さに引く

  • 節操なく金鶏の唐揚げにぱくつく
  • ファッチュウチョンには「うまいねぇ」
  • ツバメの巣のデザートが来る前には「食った食った」
  • しかも「春雨みたい」と声に出して言っちゃう

あまりにも言葉遣いやマナーが酷いと感じたんですが、袁社長が時には「どれもこれも素晴らしい料理で堪能しました」と、突然礼儀正しくなってそのギャップにびっくり。

広州酒家

酒家

居酒屋、料理店、飯店、飲食店

作中では、なんだか特定のお店を挙げているような印象を与えるような言い方をしていましたが、要するに「広州の飲食店」ということです。
当たり前にように「広州酒家!広州酒家!」と言っていますが、視聴者にはちょっと伝わりにくいかなーと。

参考文献