『美味しんぼ』第105話「日本の根っこ」の感想
1991年11月5日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第105話「日本の根っこ」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第119話)
もくじ
あらすじ
近城勇の相談
栗田に電話。
カメラマン・近城勇から山岡への相談事でした。
久しぶりに帰国している仲の良い有名デザイナー・平尾英が近城に「疲れた、もうパリには帰りたくない」と愚痴をこぼしているので、食べ物を使ってパリの良さや素晴らしさを思い起こさせることはできないかと相談。
- 平尾英
20年近くフランスに住み、パリで活躍するデザイナー。カンサイ(山本寛斎)や三宅イッセー(三宅一生)と肩を並べる売れっ子。
カメラマン・近城勇もポートレートの撮影をして以来、仲が良い。
フランスでレストラン評論を連載するほどの食道楽。
パリが嫌ならパリの個人会社を譲渡して日本で仕事をすれば良いのでは、と言う山岡に、近城は主旨を汲み取ってもらえなかったことに眉をひそめながら舌打ちをして見せます。
平尾の個人会社はパリで平尾本人が陣頭指揮を執ることで成り立っており、平尾がパリを離れることは多額の負債を背負うことだけではなくデザイナーの廃業そのものを意味していました。
一度は断った山岡でしたが、近城が海原雄山にも同じ依頼をしていることを知った山岡はその相談を引き受けます。
- 近城勇と海原雄山の関係
敢えてフラッシュを焚きながらシャッターを連射する近城に、インタビューで九谷焼と料理の相性について答えていた海原雄山は目を剥いて怒鳴る。
わざと怒らせたことを見抜いて理由を尋ねた雄山に、近城は自己抑制の強い雄山の真の姿を撮るには笑わせるか怒らせるかしたかったが、雄山は怒ったときに本質がむき出しになると思った、と明かす。後日、出来上がった写真に写る自分の形相を見た雄山は愉快そうに笑い、近城を専属のカメラマンにした。
栗田の不安
フランス支局採用でフランス帰りの仁木まり子は、平尾の書いた批評や贔屓のレストランとその得意料理などのデータをすぐにパリ支局から取り寄せます。
しかし、平尾がパリを懐かしがるフランス料理を食べさせようと意気込む山岡とまり子を見て、栗田は漠然とした不安を覚えます。
日本の根っこ
会食が開かれたのはレストラン Cellars。
山岡が出した本格的なフランス料理に平尾は満足するも、これが東京で食べられるならパリに帰る必要がないと言い出します。
一方、雄山の出した握り飯とぬか漬けを食べると、その美味しさに平尾は雄叫びのような大声を上げて感激します。自分が失ったと思っていた日本の根っこの存在を再認識すると平尾の不安は吹っ切れて、根っこさえしっかりしていれば、世界中どこへ枝を伸ばしても大輪の花を咲かせられますと、パリへ戻ることをその場で決意。
平尾が何に苦しんでいるかはっきりと掴んでいた雄山、平尾の心を慮る努力を怠った山岡たちの差が明確に現れる結果となりました。
登場した料理、食材
Cellarsで供された料理
山岡士郎の用意した料理
- フォアグラ・ソヴァージュ
飼料を無理やり食わせる養殖のガチョウではなく、sauvage(ソバージュ、野生)のガチョウの肝臓を使っているので、香りがすっきりしていて、こくがあるのに後口が軽い。
平尾もパリで1,2度食べたことがある。
- 牡蠣と帆立の貝柱パイ
魚のだし汁の中で軽く火を通し、生クリームと卵黄でとろみをつけてパイの中に入れ、軽く焼き上げたもの。
平尾がパリで何度食べたか分からないほどの大好物。- 子羊のアイ・オブ・リブの薄切りソテー
ソースはマスタードソース。付け合せはオーストラリアから空輸してきたアスパラガス。(オーストラリアの空輸アスパラガスは第84話「食は三代?」でも登場)
ハッカの葉、シャンツァイを乗せて食べるとまた趣が変わる。最近のパリはベトナム料理が盛んなので、ベトナムを知らない平尾にとってはむしろハッカやシャンツァイの香りはパリを思い起こさせる。
海原雄山の用意した料理
- 冷えた握り飯とキュウリのぬか漬け
左手に握り飯、右手にきゅうりを持ってかぶりつく。
- 中継ぎの飲水
神奈川県の丹沢山中から汲んできた岩清水。
平尾は「甘露」と絶賛する。
- 甘露
古代中国において、天地陰陽の気が調和すると天から降るとされる甘い液体。
感じたこと
九谷焼に対する印象が雄山と一緒
海原雄山は九谷焼についてこう言っています。
「日本の根っこ」|美味しんぼ
- インタビュアー:先生は昔から九谷焼をあまりお好きではなかったんですか
海原雄山:左様。あの紫、緑、黄色といった色彩感覚が、ややもするとくどくて下品に感じてしまって料理にはどうもね。私は自分の料理に九谷の器を使う気にはならない。
- インタビュアー:では、先生は九谷は嫌いだと仰るんですね?
海原雄山:まぁなかには九谷にも良いものもあれば悪いものもある。
これにはめっちゃ同意。九谷焼だけじゃなくて伊万里焼にもそういうものがあると思うんですけど、彩度が高くて緻密な絵柄を持つ器というのは、そのセンスもさることながら料理との組み合わせが難しいと感じます。もちろん相性の良い皿と料理、センスの良い皿であれば問題はないんでしょうけど、やはり単純に飾り皿として扱うよりかは難しいと感じます。
で、九谷焼の印象に対するこのモヤモヤした感じ、これは雪に覆われる北陸地方の雪景色やどんよりした天気、それにまつわる内装・家具や料理でこそ活きるのであって映えるのであって、北陸という風土から切り離してしまってはその魅力を失うという話を聞いてハッとしました。正にそれだと腑に落ちたんです。
雄山毒舌すぎてわらった
雄山:ふん、近城、こんな男の作ったものを食べさせるなんて、まるで平尾さんを殺すようなもんだぞ
流石に言い過ぎでしょ(笑)
美食倶楽部の床の間の掛け軸が気になる
雄山のアップのシーンで「龍三郎」の文字が見えるので、恐らく梅原龍三郎ではないかと思われます。でも実際の書を見つけることはできませんでした。
- 梅原龍三郎
梅原龍三郎(1888年 – 1986年)は京都府出身の洋画家。書道もおこなう。代表作には「桜島」「裸婦扇」「薔薇」「紫禁城」「富士山」などがある。
パパ仁木って登場してたっけ??
パパ仁木は103話で初めて登場しましたけど、今回のエンドクレジットにもまり子の父親 依田英助とありました。でも今回はどこで出てましたっけ??
日経記事の孫正義を思い出した
- 一見非常にモダンでファッショナブルな人が、実は会社の屋上にお社を作って毎日拝んでいたり
- 休みの日には庭で木刀の素振りをしていたりとか
クリコは黄昏れたビルの屋上で士郎とこういう例を上げて不安を述べていたんですけど、なんかめっちゃ孫正義さんっぽいなって思いました。
- 大事な会議での部下のプレゼン中、孫正義は席を立つとおもむろに木製バットを持って無言で振り回し始める
- (ブンッ、ブンッ。)
- 部下(俺、どうなるの――。)
- 今度は竹刀に持ち替えて上段の構えで素振りを始める
- プレゼンが終わる
- 孫正義「100%アグリーだ。いますぐやれ」と指示を出す
- 部下「本当に殺されるんじゃないかというくらいの殺気を感じた」と後に振り返る
一部始終は下記のにっけいリンクに書いてあるんですけど、会員限定記事。
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