映画『プラダを着た悪魔』の観想
久々にPrime Videoで『プラダを着た悪魔』を観ました。もはや今まで何回観たか分からない名作です。
もくじ
概要
タイトル | 原題 | 初公開日 | ジャンル | 時間 | 国 | rating | 制作費 | 売上 | 監督 |
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プラダを着た悪魔 | The Devil Wears Prada | 2006年6月30日 | ロマンティック ・コメディ・ドラマ映画 | 109分 | アメリカ | PG12 | 35,000,000ドル | 326,073,155ドル | デヴィッド・フランケル |
制作費3500万ドルに対して9.3倍となる3億2600万ドルの世界興行収入を得た。(プラダを着た悪魔 (2006)|The Numbers)
2003年2月6日に発行されたローレン・ワイズバーガーの小説が原作。映画化は2006年。上演時間は109分。日本での映画レイティングシステムの規定ではPG12指定(12歳~14歳以上視聴可能)。
あらすじ
主人公のアンドレア・サックスはジャーナリストを志してニューヨークにやってくる。夢は週刊誌『ザ・ニューヨーカー』か月刊誌『ヴァニティ・フェア』で働くこと。
アンディはイライアス=クラーク出版の紹介を頼りに、同出版社の一流ファッション誌『RUNWAY』のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタントになる。しかし誰もが羨むそのポストは、悪魔のような編集長の犠牲者を幾人も出してきたポストでもあった。
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鳴り続ける携帯電話と不条理な要求に挫折する毎日だったが、ナイジェルのチカラを借りておしゃれにも努めるようになるとミランダの評価も徐々に変わっていく。ある日初めて「アンドレア」と呼んでもらえるようになり、今までエミリーの仕事だった「自宅へ本を届ける」ことまで任される。しかしそこでアンディはエミリーの言いつけを破って2階に上がり、ミランダと鉢合わせしてしまう。
怒ったミランダは公開前の新作『ハリーポッター』原稿入手と15分以内のステーキを要求する。ステーキハウス「スミス&ウォーレンスキー」の帰り口にバス広告の『ホームレス・ハムレット』を見たアンディはその著者であるクリスチャン・トンプソンに相談する。彼は、アンディが新進気鋭のデザイナーであるジェイムズ・ホルトの新作を受け取りに行った先で知り合ったイケメン作家で、アンディが大学時代から憧れていた人物でもある。セント・レジス・ホテルのキング・コール・バーでトンプソンと落ち合い、彼の知人を介して装丁家から原稿を入手したアンディはこの難局を乗り切る。
ネイトの誕生日を祝うはずが、エミリーの体調不良を理由にアンディも『ランウェイ』主催のパーティーに駆り出される。そこにはミランダが大嫌いなフランス版『RUNWAY』編集長ジャクリーヌ・フォレの姿もあった。ニューヨーク誌の編集者を紹介するというトンプソンからの誘いをも断ってネイトのために急いで帰るが、ネイトは虚ろで二人の関係は悪化していく。
ある日「本」を届けるとミランダに呼び止められ、エミリーの代わりにパリ・コレクション同行を命じられる。アンディは抵抗するが、エミリーの交通事故で否が応でもパリへ行くことになる。リリーの展覧会に訪れたアンディは、ダグとリリーが離れた隙にトンプソンと出くわして親密な様子をリリーに目撃され、ネイトとも別れてしまう。
パリコレのさなか、ミランダは夫との離婚や娘への思いを明かし、今までに見せなかった姿をアンディに晒していく。一方でナイジェルは、マッシモ・コルテリオーニ氏が出資したホルト・インターナ・ショナルのパートナーとしてミランダの推薦で内定したことをアンディと祝う。
アンディはジャクリーヌ・フォレが新編集長になった「ランウェイ」の見本をトンプソンの部屋で見てミランダ解任の動きを知る。しかしミランダ自身はそのことを随分と前から察知しており、イライアス=クラークの会長への直談判の準備をしていた。もし編集長を解任されれば「ランウェイ」で育てた優秀な部下をすべて引き抜くという脅しに加え、ナイジェルに内定していたホルトのパートナーの席をジャクリーヌ・フォレに譲ることで会長から編集長継続の合意を得る。
会場に向かう車中でミランダから「あなたは私に似ているわ」と言われたアンディは、携帯電話を噴水に投げ捨てて仕事を放棄する。
アンディがパリへ行っている間にネイトはボストンにあるレストラン「オーク・ルーム」のサブチーフに採用されて引っ越しを控えていた。ネイトの忠告が正しかったことを認めるアンディとそれを受け入れるネイトの二人は関係を再開し、アンディもミラー紙(The New York Mirror)の面接へ向かう。そこでアンディは、同紙のグレッグ(ジョン・ロスマン)が照会した際にミランダから直々にあった「今までのアシスタントで最も期待を裏切ってくれた」という最高の賛辞を知る。
アンディはパリで着た服を引き取ってもらうようエミリーに依頼し、嬉しそうなエミリーはそれを渋々受け入れる。電話を終えると偶然にも道路の向こう側にミランダがいた。会釈しても素知らぬ顔で車に乗り込んだミランダは、アンディを眺めて静かに微笑む。
原作者の経験が根源にある
小説の著者、ローレン・ワイズバーガーもあの有名なファッション誌『ヴォーグ』で編集長のアシスタントをしていた経歴を持ち、この実体験が作品を書く上で生かされているそうです。生身の声ですね。
ミランダのモデル
- デイム・アナ・ウィンター DBE
Dame Anna Wintour DBE(1949年11月3日生まれ)。イギリス出身。1988年からアメリカ版『ヴォーグ』の編集長を務めた。
長年のファッション界への貢献を評価され、2008年には大英帝国勲章のOBE(オフィサー, 将校)を授与された。DBE(デイム・コマンダー, 司令官騎士)その2つ上のランク。
1984年に結婚した13歳年上の精神科医デビッド・シャファーとの間にチャールズ、キャサリンの双子を持つ。
ワイズバーガー本人は「ミランダのモデルはアナ・ウィンターじゃない」と否定しているそうですが、立場や双子のことを考えるとその主張はちょっと苦しいですよね。
アナ・ウィンター本人が出演するドキュメンタリー映画もある
アナ・ウィンター本人が登場する『ファッションが教えてくれること』という2007年のドキュメンタリー映画もあります。
続編とは呼べませんが、『プラダを着た悪魔』が2006年で、時系列としてはその後となります。
ファッションについて悪く言う人たちは 恐れや不安の裏返しなのね
ファッションが教えてくれること
立ち姿とか、デスクの置き方とか、もうそのまんまミランダじゃないですか・・・・!?
こちらも、実際のヴォーグのオフィスに潜入したり、ランウェイのシーンが流れたり、普段見慣れない光景がたくさん見れてとても面白い作品でした。
原作と映画の違い
原作と映画はかなり異なります。ここはちょっとネタバレになるかも。
調べてみると、原作の小説とはかなり違う内容になっているみたいですね。私は原作を読んだことがないので分かりませんが、まとめるとこういう感じらしいです。
映画と小説ではアンドレアの出身地・出身大学が違う。
恋人のネイトは小説ではアレックスという名前で、料理人ではなく小学校教師。
エミリーの人間像は異なる。(エミリー・ブラント演じる映画のエミリー・チャールトンは刺々しい性格をしているが、小説では温和。)
映画ではミランダはパリで失脚を画策されるが、これらはすべて映画のオリジナル・ストーリー。
アンドレアはパリで仕事を放棄するが、小説ではミランダと直接対決をする。
エミリー・ブラント演じるエミリー・チャールトンは小説では単核球増多症のせいでパリに行けなくなる。
一方、トレイシー・トムズ演じるリリー(アンドレアの親友)は交通事故に合い、昏睡状態に陥る。
『ランウェイ』で働いていた時に集めた服は、映画ではエミリーに売っている(その手前で映画は終わる)が、小説では古着屋に売っている。
だいぶ違う・・・・。
好きなシーン
ガーディアンローイン?
アンドレアが初めてミランダと会う直前のシーンでスタンリー・トゥッチ演じるナイジェルが軽く口笛を鳴らしたあとに仲間たちに向けて言った言葉です。
- All right, everyone! Gird your loins
みんな、戦闘態勢につけ
「ここの英語の言い方、なんかかっこいいな。でも何て言ってるんだろう?」って気になっていたんですけど、ずっと分からないままモヤモヤしてたんです。
「ガーディアンローイン」「ガーディアロイン」みたいに聞こえますけど実際には、Gird your loins(ガード・ユア・ロインズ、ガーデュアロインズ)です。直訳すると「あなたの腰を締めろ」=意訳として「戦闘態勢につけ」というわけです。由来は聖書だとかいくつかあるみたいですが、要は作業する時ゆったりした服を動きやすくするためにロープで腰に結わえるという意味です。
サーロインステーキ(sirloin steak)のサーロインもLoin(腰)ですね。サーロインは腰の肉ですから。
調べてみたら、元は14世紀フランスの「Surlonge」(シュールロンジュ)が語源。フランス語でSur=上部、longe=腰をそれぞれ意味します。(またひとつ勉強になった。)
音楽も良い
主題歌Suddenly I Seeが素敵
主題歌にはスコットランドのシンガーソングライターであるKTタンストール(KT Tunstall)のSuddenly I Seeが採用されています。
とても元気が出る曲で、冒頭のこの音楽を聞くだけで盛り上がれてしまいます。
- 2006年映画『プラダを着た悪魔』
- 2006年からのドラマシリーズ『アグリー・ベティ』
- 2014年映画『あと1センチの恋』
などなど。この曲が他の映画やドラマ作品でも使われているのを見かけることもあるんですけど、『プラダを着た悪魔』の印象が強すぎて、他の作品で見かけると凄く違和感を覚えてしまうようになりました。
BGMも良い!
- マドンナの「Jump」「Vogue」
- U2、アラニス・モリセット
- ジャミロクワイ
こんな会社絶対イヤなのに見ると元気をもらえる
こんな会社や上司、私なら耐えられません。でもこの映画を見ると、不思議なことに「よし、自分も仕事がんばるぞ!」って元気がもらえるんですよね。
自分より過酷な環境を見るとことで相対的に自分は「救われているほうだ」と思っちゃう部分もあるし、アンドレアに感情移入して「彼女だってこんなに頑張っている」と勇気づけられる部分もあって、もうちょっと踏み込んで言うと、作中でアンドレアが仕事に悩んだなかで自分を打破するシーンがあって、自分の環境を変えることが出来るのは自分自身だけだ(自分次第)ってことを言い聞かせてくれるんです。もしかしたら立場上、周りのせいでどうにもならないこともあるかもしれませんけど、その中でも「自分で変えられることは変えいこう!」と。
この映画が人生のターニングポイントとまでは言いませんが、単純な娯楽映画ではなく、観る度に何か心にひとつのキッカケを与えてくれる映画として私はこの映画がとても好きですね。
実在するニューヨークの名所・名店
- ディーン・アンド・デルーカ(公式ページ)
ハリーポッターの一件が片付いたその夜、ネイトがイチゴを買った店。DEAN & DELUCAは日本でも京都、大阪、伊丹、名古屋、東京、岡山などに展開している。
- スミス&ウォーレンスキー(公式ページ)
smith & wollenskyはニューヨークにある有名なステーキハウス。
- キング・コール・バー(公式ページ)
King Cole Bar Loungeは、セント・レジス・ホテルの中にあるバー。「ブラッディマリー」の発祥の地として有名。
- ノグチガーデン(公式ページ)
イサム・ノグチ美術館のこと。アーティストで建築家のイサム ノグチ作品を展示しており、見事な彫刻庭園がある。
- マグノリア・ベーカリー(Google Maps)
ネイトの誕生日のために寄ろうとしていた店。ニューヨークで設立されたベーカリーチェーン店。1996年に1号店がマンハッタンのウエスト・ヴィレッジ地域にオープン。日本にも表参道店として進出があったが、2017年に撤退している。
小噺
- スタンリー・トゥッチ(ナイジェル役)
映画公開後の2009年に乳がんだった妻を亡くすが、エミリー・ブラント(作中のエミリー役)の結婚式に招待された際に彼女の姉と知り合い、2012年に再婚する。
- ミランダに耳打ちする仕事
ミランダはパーティーで様々な人と挨拶を交わしている。チェルシー劇団 新芸術監督 ジョン・フォールジャー、フランクリン大使とレベッカ、そしてフランス版『RUNWAY』のジャクリーヌ・フォレ。
古代ローマ時代にも、主人の付き添い、出会う人の名前・近況・役職などを主人に耳打ちする「nomenclator」(ノーメンクラートル)という奴隷が存在した。
カメオ出演
登場シーン | 人物 | メモ |
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オープニングでミランダの乗ったエレベーターから降りる女性 | イニェス・リベロ | 現役モデル |
変身前のアンディのダサさをエミリーと笑う同僚女性 | ジゼル・ブンチェン | 現役モデル |
“都会のジャングル"特集で豹柄のメイクと衣装をまとう女性 | ブリジット・ホール | 現役モデル |
パリコレでミランダと挨拶するベージュのスーツに黒いネクタイをした男性 | ヴァレンティノ・ガラヴァーニ | Valentinoの創始者 |
パリコレでランウェイを眺めるガラヴァーニの右隣に座る女性 | ハイディ・クラム | 現役モデル |
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