Kineticの腕時計の分解、電池交換の手順!意外と簡単だった!(SEIKO 5J21-0A10)

SEIKOのKinetic Auto Relayという機構を持つ腕時計(品番: SEIKO 5J21-0A10)を分解し、自分でバッテリー交換しました。意外と簡単にできたので、これからやる人のために画像つきで工程を紹介します。

背景

SEIKO KINETIC / 5J21-0A10

私がこの腕時計を買ったのはうろ覚えながら2004年頃だった気がします。

購入から5年目くらいまでは全然元気でした。ところが7年目あたりから電池の劣化を感じるようになりました。本来なら1ヶ月くらい放置しても内部では動き続けるはずが、久しぶりに動かそうとしても針が動かない。次回使うまでにバッテリー切れを起こすようになったんです。

それが1週間、3日と段々短くなり、とうとう毎日動かさないとすぐに止まるようになりました。特に電池がほぼ無い状態では、秒針が2秒おきにチクタクッ・・(2秒)・・チクタクッと2秒分一気に動くようになって故障を疑います。
それでも13年目から15年目くらいまで騙し騙し使ってたんです。なんという無精。(笑)
で、ようやく重い腰を上げて自分で電池交換することにしたんです。本来なら5~6年毎に交換するべきでしょう。

SEIKOのKinetic Auto Relay

多くの腕時計はボタン電池で動きます。一方、ロレックス、オメガ、はたまた老舗パテック・フィリップのようなメーカーが出している自動巻きの腕時計は振り子でゼンマイを巻き上げています。

SEIKOのKinetic Auto Relayは普通の腕時計とは違うちょっと特殊な機構を持っています。自動巻きのような振り子を内部で回転させて発電し、それを蓄えた蓄電池(二次電池)で動く仕組みです。クォーツ時計の正確さと自動巻きの楽しさを兼ね備えたハイブリッド構造です。

完全にアナログな自動巻きの時計は舐めるように滑らかに秒針が動きますが、キネティックは電池で動くので秒針は電池式の時計と同じようにチックタックと1秒ごとに動きます。

特殊なギミックに惚れた

キネティックの面白いところはその電動力だけではありません。下の動画を見て貰えれば分かりますけど、(72時間とかだったかな?)キネティックは一定時間放置すると節電のために自動的に全ての針を停止させます。(手動でも止めることはできます)

でも内部ではちゃんと時間を刻んでいて、次回使用するときに振動を与えると現在の時間に自動的に針を合わせてくれる機能を持っています。

下の動画の機種は別物ですけど、自動的に針を合わせてくれる機能は同じです。↓

男ってね、密閉度の高い車のドアを閉める時のバフッっていう音とかこういうギミックとかについ惚れ込んで買っちゃうんです。

でもこの時計に使われている蓄電池は徐々に性能が劣化し、いつかは交換が必要になります。

普通のクォーツ時計の電池寿命と電池交換の工賃

一般的なクォーツ式の腕時計なら大抵は2年から3年で電池が切れます。

でも、もし時計屋さんで電池交換を依頼した場合、単純な電池交換だけなら1500円前後でしょう。激安のところで500円。防水腕時計の場合はパッキン交換とかグリスアップで更に1000円くらい追加料金を取られるかもしれません。ちなみに、電池の原価は1個100円もしません。ほとんどが手間賃です。

キネティックの電池交換

ところがキネティックの場合は5000円とか7000円取るところが普通です。どんなに安くても3500円くらい。

なぜかというと二次電池(充電式のリチウム電池)が高額だからです。一般ユーザーが自前で電池を買うと2000円以上します。業者ならもう少し安くで仕入れているのかもしれませんが、それでも工賃を含むとどうしても4000円くらいにはなってしまうのです。

しかも、他のモデルは知りませんけど、私の持っている(5J21-0A10)は10気圧防水仕様ですから、その工賃も含めると5000円、6000円コース。庶民の私にとってはぶっちゃけ高い・・・。(10気圧とは、水深に換算すれば100 m相当)

必要な工具

今回必要なのは次の工具です。できれば色々持っている方が良いんですけど、最低限これだけあればどうにかなります。

  • バンドピンリムーバー
  • ミニハンマー
  • スクリューバック オープナー
  • マイナスドライバー(2~3本: 0.5 mm~1.5 mm
  • ピンセット
  • シリコングリス&塗布器

時計専用の精密ドライバーじゃないと無理

以前、スマートフォンのバッテリーも自分で交換したことがあって、その時にスマホ用の精密ドライバーを購入しました。でもスマートフォンの分解に使うドライバーでは腕時計は分解できません。もう全然スケールが違います。

ドライバーだけでも高級なものを

必要な工具はセットで購入するのが得策です。
なぜなら、時計の修理工具は数が多いので単品で揃えると高く付くからです。しかも中途半端なセット品がたくさんあり、その都度買い集めると重複する工具が出てきます。本当に無駄です。

また、安いものは本当に使い物になりませんから高級なものを買うべきです。私もケチってAmazonで2000円くらいのを買いました。でもいくつか問題がありました。

ドライバーがネジの溝に入らなかった

私が買った時計工具セットの中で、刃先の一番細いドライバーが0.8 mmだったんですけど、先端の加工精度が悪いためか溝に入らなかったんです。バッテリー部分のネジよりも振り子のネジのほうが大きいんですけど、それさえ開けられませんでした。

なので、自宅にあった包丁の砥石(京セラのセラミックロールシャープナー)でドライバーを薄く研ぎ直して使いましたよ。(笑)

しかも、開ける時に使っただけでドライバーの先端が鈍ってしまったので、閉める時にもう一度研ぎ直しました。それだけで20分費やしました。

少なくともドライバーだけでも高級なものを買って、0.5 mmまであるほうが良いです。

スクリューバック オープナーのビットの形状がいい加減

一応そのまま使って開けることは出来ましたけど、ビットを装着する時点で「これ・・・開かないかも・・・」という不安がよぎりました。それくらい加工精度が酷いです。それはビットの断面を見た瞬間にそう感じました。

私のように自分なりに工夫して乗り切る自信があったり、使うのが1回きりだと割り切って安いのを使うのもいいですけど、やっぱりオススメはできません。安物買いの銭失いです。

なのでお財布が許す限りなるべく高級な工具を買うべきです。少なくともドライバーだけでも良いのを買うべきです。例えば下に紹介している明工舎製作所 MKS 精密ドライバー 10本セット。0.5 mmから2 mmまであります。刃先の厚みについては確証は持てませんが、少なくとも私が買ったセット品よりも信頼度は断然高いですし真鍮製で作りは良いです。

また、10種類もあるのでメガネの修理にも使えます

二次電池の交換手順

作業自体はスムーズにいけば10分程度で終わります。

腕時計のネジは本当に極小なので鼻息でも飛びます。マジで。作業する場所はとにかく散らかさないようにして部品の管理を徹底してください。私の場合は途中でネジを紛失して、その捜索に30分を費やしました。床を這ってまで探しましたが、結果的には裏蓋の養生テープにくっついていたことが判明。(笑)
失くすと作業を終えられなくなるので本当に注意してくださいね。

ステンレストレーの中で作業したり部品を管理するのが安全です。ティッシュの上にネジを置く人がいますけど、結構危険です。
トレーも安いやつなら1枚150円とか200円であります。私が使っているのは高儀のステンレス 角型トレー(特大)。ペラいですけど安いので使ってます。特大と言ってもA4サイズくらいしかありませんから、サイズには注意してください。

1. ベルトを外す

私は割ピンを一箇所抜いて外しました。下の動画がとても精細で分かりやすいです。

ベルトの裏側に矢印が刻印されているので、その方向にピンを押し出してください。戻すときも同じ方向(矢印の先端側)から戻してください。

2. 裏蓋を養生する

裏蓋を開ける時に傷が付かないよう、テープなどを貼って裏蓋の表面を保護します。ガラス面はサファイアガラスなので硬度があって傷つきにくいですが、裏蓋はステンレスなので工具で引っかくだけで傷がつくので注意してください。

3. 固定台に固定する

この工程は無くても進められますが、固定しておいたほうがあとで作業しやすいです。

4. 裏蓋を外す

裏蓋にビットのツメを引っ掛けて反時計回りに回します。この動画を参考にしてください。↓

5. 振り子を外す(マイナスネジ1本)

電池の上に振り子が覆い被さっているので、まず最初にこれを取り外します。

裏蓋を外した状態
6. 古い電池を外す(マイナスネジ2本)

2つのネジを取って金属カバーを外します。

赤く色付けした部分の下に電池がある

金属カバーと電池の間には半透明なオレンジ色の絶縁フィルムが挟んであります。フィルムは元に戻す必要があるので失くさないで下さい。でも交換用の電池にフィルムが付属している場合もあります。その場合は古いフィルムは捨ててもOKです。

古い電池と絶縁フィルムを外した状態

時計の型番も電池の形状も違いますが、下の動画を参考にしてください。↓

7. 新しい電池をはめる

買うべき二次電池はこれ。

私の時計の裏面には(SEIKO 5J21-0A10)とあります。一方、電池の説明には対応機種として(5J21A)とあります。後ろに(A)が付いてて「え!?これでいいの!?」と不安になりましたが大丈夫でした

新しい電池をはめた状態

奥に見えるのが古い電池とオレンジ色の絶縁フィルムです。

このあと、フィルムを乗せて金属カバーで再び固定します。フィルムや金属カバーには小さなピンホールが開いていて、本体のピンをこの穴にはめてポジションを確定させます。根気よくやってください。

8. 防水パッキンにシリコングリスを塗布する

裏蓋側にパッキンが付いているはずです。蓋から外し、塗布器にゴムパッキンを挟み込んでシリコングリスを薄っすらと塗布し、もとに戻します。あんまりベタベタに塗らないのがポイントです。塗布器に挟んだ時にあんまりグリグリ擦るとパッキンが捻れますから優しく扱ってください。

9. 全て元に戻す

来た道を戻ります。最後に外部についたグリスや汚れを洗浄してフィニッシュです。

古い電池は少し液漏れを起こしていたようで、外周部が茶色く錆びていました。そら全然保たんワケや。今までほったらかしにしてごめんな・・・。

父にプレゼント

実はこの時計、たまに使うこともあったんですけど、ここ5年くらいはほとんど使ってなかったんです。それならいっそ親父に譲ってやろうと思いまして。親父も喜んで毎日着けています。良かった。