『美味しんぼ』第98話「ほうじ茶の心」の感想
1991年7月30日放送、アニメ版の『美味しんぼ』第話「ほうじ茶の心」をアマゾンプライムビデオで観ました。(美味しんぼTVシリーズ第112話)
もくじ
あらすじ
焙じ茶の思い出
真夏の猛暑日。
強い日差しのなか有楽町駅東口から社内会議に向かう山岡と栗田は、店頭に置かれて濛々と煙を出す水島茶舗の焙じ機を見かけ、山岡は焙じ茶にまつわる過去に耽ります。
- 焙じ茶にまつわる山岡士郎の過去
下宿していた学生時代、母の病を知った士郎は実家に戻り見舞う。そこへ現れた海原雄山は床に臥せっている母に焙じ茶を淹れるよう命じ、母は静かに身だしなみを整えると火鉢と炭火で茶を焙じ始める。
雄山に反抗する士郎に、母は「そんな悲しいこと言わないで頂戴、あなたには人の心が分からないの?」と後ろ姿で呟き、焙烙(焙じ器)を取り上げて投げ割った士郎を平手打ちにして涙する。
加村鯉一の悩み
社内の会議室は暑く、皆がアイスコーヒーなどを頼むなか谷村部長は熱いものを欲しがったので全員で熱い焙じ茶を飲むことになります。
山岡が機械で焙じた焙じ茶が美味しくないというと、それを聞いた谷村は旨い茶を欲しがっている作家・加村鯉一の話を持ちかけます。
- 加村鯉一
東西新聞社の夕刊連載直前の作家。スランプが長く、書出しに苦しんでいる。
鯉一、真紀、敦、達也の4人ぐらし(東向島2丁目-3)
焙じ方の伝授
山岡がしぶしぶ加村邸を訪ねると、出かけ際の鯉一が妻・真紀を玄関で叱責しており、鯉一の亭主関白のような振る舞いを見た山岡は自分の苦い思い出を真紀に打ち明けます。
しかし真紀からは思い違いをしているのでは?視点を変えてみたらどうか?と諭されます。一度は反論する山岡でしたが、何か腑に落ちた部分があったかのように閉じていた目を開き、焙じ茶の淹れ方を教え始めます。
焙じ終えると、電車に乗ろうとした時に閃きを得た鯉一がちょうど帰宅して真紀に茶を淹れさせます。鯉一がおかわりを求めると今度は真紀が自ら焙じ始め、山岡はその後姿と母を重ね合わせます。
終始うつろな表情をする山岡を心配した栗田は夕食の奢りを提案し、元気を出した山岡を追いかけて腕に抱きつきます。
登場した料理、食材
鯉一に淹れた番茶の焙じ茶
- 番茶に使用した川柳(かわやなぎ)
5月の八十八夜前後に摘み始める一番茶の精製過程で出る不揃いな葉、茎、芽などを集めた最高級品。
- 火鉢と焙烙が無いため、代用として七輪と懐紙(奉書紙)を使用する
- 炭火の上にかざして紙を揺すり、満遍なく加熱する
- 葉がきつね色に変わり、煙が一筋、二筋立ち上れば焙じるのを止めて、急須に移してお湯を注ぐ
茶
- 焙じ茶
煎茶や番茶、茎茶を焙煎して淹れる茶。一般的には、低級な番茶を使用することから低級の茶として認識されているが、京都では高級な茶葉を使用した高級な茶として扱われる場合もある。
- 煎茶
日光を遮らずに栽培し、何段階にも分けて新芽の茶葉を揉みながら乾燥させていく製法の緑茶。
- 番茶
三番茶や四番茶(夏以降に収穫した茶葉)、秋冬番茶(次期の栽培に向けた整枝で出る茶葉)、川柳(かわやなぎ)などを用いた緑茶。
- 川柳
煎茶の精製過程で出る不揃いな葉、茎、芽などを集めた茶葉。
感じたこと
茶の淹れ方の解説も欲しかった
川柳という形で茶葉の選定にもこだわり、焙じ方についても細かったのに、そこからお茶にするまでの過程についての説明が全くなかったのが残念。
例えばお湯は何度くらいがオススメとか、何分くらい蒸らすとか。
番茶とは何色か
これは地方によって違いがあり、絶対的な答えはないように感じます。
例えば、一般的に番茶といえば黄緑色の緑茶で、焙じ茶と言えば香ばしい茶色。
でも京都人のように番茶=京番茶=香ばしい焙じ番茶=茶色という印象を持っている人もいて、番茶が何色であるかは地方によって異なります。
美味しんぼ史上一番難しい感情描写では?
いつもは何事もシンプルな美味しんぼ。
でも、海原雄山と士郎の親子関係、特に今回のような海原雄山と母の関係性と、それを士郎目線で見た時の感情描写というものは極めて複雑で繊細で、リアリティーがあって見応えがあるなぁと感じました。
アニメはずいぶんと昔に作られてそれっきりですが、続きを作ってほしいなぁと思うばかりです。こう感じているのは私だけじゃないはず。
ラストシーン
クリコが士郎の腕に何気に抱きついてますけど、たとえ仲の良い先輩後輩でもこうはなりませんよね?しかも真夏ですよ?
うーん、早く結婚しろ。
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